修羅場、つーのは血生臭い戦場という語源の通り、 元はオレらの生業に馴染み深い言葉だった。 それがいつの間にか、 痴情のもつれに使うような甘っちょろい意味合いの方が 名を上げてきた訳だがオレにはそっちの修羅場は縁は無い。 ──そう18年間生きてきて思っていた。 ところが今オレが直面している修羅場は、 どうやら俗世間染みた方なのだった。売り言葉に買い言葉
あの外道の化身の様な姫川とまさかの肉体関係の始まりは、何度つっぱねてもネチッこく誘ってくるしつこさと──、 「男同士って10倍イイんだぞ。キメセクより全然いい」 とかなんとか。 姫川得意の口八丁に言いくるめられたオレの好奇心。 ズリ合いの延長みたいなものだと割り切って、 いつだったかの放課後、のこのこ姫川の家へ行った。 その日の事はまだ薄ぼんやり覚えている。 普段は口数が少ない姫川がさらに口を閉ざしてエレベーターの密室空間で、じっと見つめてくる物だから鳥肌が立った。 ヤりたいってのは口実で、 実はマジにオレに気があるんじゃねーかと思ったが──、 「よく見てもやっぱ変なツラ。勃つかな」 なんて真顔で言う姫川のおかげで鳥肌はすぐに治まった。 その礼に腹にワンパンをくれてやった。 そんなこんなでその日に悲しいかな処女を捨てた。 思ったより体の負担もなく、それなりにヨかったしで、 帰り際に姫川に差し出されたヤリ部屋の鍵を受け取った。 恋人のような空気を出されようもんならすぐ切るつもりだったが、姫川も伊達に女をはべらせてはいない。乳が恋しい時は素直に女と遊ぶ。翌日にはそのハメ撮りを手に、乳の形について夏目や古市あたりと談笑して、そうして乳に飽きてくればまた気まぐれに誘ってくる。 最近に至っては女といる時も誘ってくる。 姫川が遊ぶ女は大概はそこらで拾ってきた女だったが、 そこらで拾ってくる割にはレベルが高い。 それでも一晩限りがほとんどなのだ。 腹の立つ。 少し前までは、こんなフランスパンのどこがいいのか、甚だ疑問だったが、ぶっちゃけ上手い。 何ってアレが。 セックスが。 そこに顔と金も付いてくるのだから、 そりゃモテるのは認めざるを得ない。 性格はクソだが、そのクソさすら霞む。 姫川がよく顔を出す界隈では、持ち帰って欲しいと手を挙げる女が掃いて捨てるほどいる。 持ち帰った女が二人いる時は、どっちが先に女をイかせるかなんて遊びをするが、姫川が気に入る女が一人しかいなかった時。こういう時はオレが女とヤっている背後に来て──、 「アナル空いてるからいーよね」 なんてほざいて、オレに突っ込んで来る。 いや、普通女のケツだと思うだろ。と思いつつも、すっかり教えこまれたオレの体も反応するからどうしようもない。 女の前で掘られるのも、それをまぁいいかなんて思えるのも大概が一晩限りの女だからだ。 二度と会う事も無いからやりたい放題出来る。 とは言っても気が向かない時もある。 オレ好みの女を拾えた時とか。 基本的に姫川と女の趣味は合わないから滅多に無いが。 そういう時は、今日はヤられんのは嫌だと一言告げれば、 姫川は絶対に手を出してこない。 案外いい奴だった。 適度に距離を保つ姫川とだらだら気の向くまま遊んでいた。 そんな、 賢く、 要領よく、 気楽~に遊んでいたはずのこのオレがだ。 こんな俗くさい修羅場に身を置くのはかなり不本意なのだ。 「何度も言わせるな」 姫川の低い声が張り詰めた空気の立ち込める部屋に響く。 いつもは堂々と大手を広げ踏ん反り返っているソファに、今はうな垂れて前屈みに座っている。 「お前には……その」 組んだ両手で額を支え、わざとらしく深いため息をつくと、 「勃たねーんだよ。だからお前とは出来ない」 そう続けた。 もう今すぐにでもこんな下らない議論なんてさっさと切り捨てて帰りたい。 景色もよくて、風呂もサウナとジャグジー付き。 さらには後始末から送迎までする執事までいる。 どこぞのラブホよりもいい条件に釣られて姫川の部屋に来る事が当たり前になっていた事を深く後悔した。 オレよりも随分と背の高いガラス壁によりかかってやり場のない視線を外の景色に向ける。30階から見下ろす夜は、煌びやかな宝石箱さながらの景色でわりと好きだ。 それをぽけっと眺めながらどうやって帰ろうか思案する。 そうだこの動く宝石のひとつ、車だ。 タクシー捕まえて領収書きって姫川に押し付ければいい。 うん、決まりだ。 帰ろ。 「つーか、話し合いならオレ帰るわ」 「待て」 「ヤりてーつったから来てやったのにこんなの聞いてねぇ」 じゃあな、と姫川の座るソファの後ろを横切ると、 にゅっと伸びてきた姫川の手がオレの腕を掴む。 「待てつってんだろ神崎」 「あんだよ」 「俺を一人にして許されると思ってんのか」 思ってる。 そう口に出す前に──、 「ああ!帰れ帰れ。 そもそも私は君がここにいる事が凄く不快だ!」 正反対の意見に押しのけられる。 疲れた顔でオレを見る姫川と、その姫川の横にぴったり寄り添って座る姫川の許婚とかいう女。 男だか女だかわかんねーナリしてるそいつにガンを飛ばされても応戦する気すら起こらない。 オレはこのサムい状況から早く逃げ出したいだけだ。 「久我山、この話は後だ。神崎を呼んだのは俺なんだ。 一応の客を待たせるわけにはいかないだろ」 聞けば久我山もこのマンションの持ち主らしい。 その話を聞いた上でヤリ部屋に使ってたオレもオレだが。 お嬢様な婚約者がいるとは聞いていたが、どうせ鉢合わせた所で『キャー不潔!』だのなんだの泣きながら出て行く程度だろうと思っていた。 だが実際には、だ。 姫川に組み敷かれてシャツを捲くられる、 その時にずかずか押し入ってきて、 そのまま半めくれのシャツをこれ幸いにと掴み上げてきた。 胸倉を掴まれて不覚にも面食ってしまったオレとは違い、 すぐに状況を理解した姫川が間に割って入るのが少しでも遅かったら女とは知らずに蹴りをお見舞いしてる所だった。 そいつが姫川の言っていた幼馴染でお嬢様の許婚だと気づいたのは、そいつの第一声が──、 「無駄に種をバラまくのなら! まずこの私を孕ませてからにしてくれ!」 そう、ぶっとんだ事を叫んだからだった。 なかなか度胸と威勢がある。嫌いじゃない。 それが第一印象だった。 だが今オレがこんな状況に巻き込まれてるのとは別問題だ。 久我山は、対面に座わらされたオレにガンを飛ばし、ついでに抗議も飛ばす。 「束縛なんてしない! 姫川、君がこんな反社会勢力と遊んでようと 私と結婚して子どもを作ってくれるなら何も言わない! こいつとの関係を続けてもかまわない! いや女だって何人でも作るといい! うちの者も、君の所の蓮井さんも巧く処理するだろう」 「お、おい久我山……落ち着けって」 珍しくうろたえる姫川に詰め寄り何とも大胆なことを言う。 さすが、姫川みたいな訳のわからん男の嫁になりたがる女。 こいつもどっかネジが抜けているようだ。 むしろ愛人がいてこそ男の甲斐性という思考に感心する。 「私は落ち着いてるさ。さあ私を孕ませろ。簡単だろう?」 「だーかーら。久我山、お前には悪いが勃たねーんだよ。 友達って意識のがつえーし、今は神崎にハマってっから」 「ういーす、ハメられてまーす」 言うと二人の冷たい視線が同時にオレを見た。 言うんじゃなかった。 少しでも空気をよくしようと言ってやった 健気なオレの気持ちを哀れみの目で刺すなんてあんまりだ。 作ったピースもうなだれて行き場無く萎れた。 「ともかく。今は神崎だけで、他の相手は見れない」 本当にこいつは自然な嘘が出る。 ほとんど毎日遊び歩いて、何が他の相手は見れないだよ。 そんな嘘に付き合ってやってる自分自身に呆れて舌を打つ。 「なーオレやっぱ帰るからよぉ。 お前ら、とりあえずヤってみれば?」 話題を逸らすと哀れみだった久我山の目が、良い事言うじゃないか!と輝きだし、反対に姫川は余計な事を言うなとドス黒く死んでいく。 「俺は今は神崎じゃないと勃たないし」 「じゃあこいつを抱いてヨくなったら私を抱けば?」 「神崎の中から抜いた瞬間萎えるつーの」 「器用な奴だな」 「つーか神崎に中出ししないと ずっとムラつく身体になっちゃったのボクー」 「よほどこの男は名器なんだな。 でも私だって姫川に初めてをと決めてたから 処女を守っているし、締め付けはいいと思うぞ」 「バーカ、締め付けだけじゃねーんだよ神崎は。 俺が開発してやったから俺好みの腰使いもすっし、 マゾ入ってっから乱暴に出来んだよ。 それにな中出しっつーのは、 ああ、神崎の中に出してるー。って征服欲?つーの? それが最高なんだよ」 なんだよ、いつもぶっ壊れるぐらいガツガツ無茶苦茶ヤってくんのは、ありゃあオレがマゾだと思われてたからなのか。心外だ。 なんて、自分の前で繰り広げられる羞恥のリミットを振り切る会話に感情の矛先も狂ってくる。 「なァもう、久我山サン?さー。今じゃなくてもよくね?」 「……どういう意味だ?」 「男子高校生の性欲なめんなよ? 今姫川がオレや尻軽女に向けてる猿みてーな底なし性欲を 将来嫁になるアンタにぶつけたらカワイソーだって 思ってんだよ姫川は」 「底なし……そういうものなのか」 「そーゆーもんなの。朝までとかザラだぞ。 ガッコー行かせてほしーっつの」 「はぁ?俺がいつそん──、」 抗議に口を開く姫川に『話を合せろ』とガンを飛ばすと姫川が眉根を寄せる。ダイヤで盤面が見えない悪趣味な時計をはめた左手で顔を覆ってため息を吐いた。 誕生石だかなんだか知らねーが、精魂込めて作った精巧な機械仕掛けがダイヤまみれにされる職人の気持ちも考えろ。 「いーか?大事にされてんだよ。やだろ? 乱暴にヤられんのは。姫川の嗜虐心溢れるサドくて 青いセックスはオレが引き受けてやっから」 つーかオレは何で女に自分がオンナやらされてる事を堂々と語ってんだよ。改めて俯瞰したら、とんでもなく滑稽だ。 「だからお前は姫川がオレに飽きた頃に大事にして貰えよ」 「神崎、君はそれでいいのか? セックスするって事は少なからず好意が……」 「オレも姫川も遊びだし。てか男同士で好きも嫌いもねぇ」 言っていて気づいたが、そうだ。 姫川はいつかオレに飽きるし、オレだって姫川に飽きる。 男と女のように愛が芽生える訳でもあるまいし、 この関係の終わりは『飽き』なのだ。 あと何ヶ月かすれば高校も卒業する。 住む世界も変わるし、自然と疎遠になるんだろう。 そうしてその穴を埋めるのは、この女しかり、姫川の好みの女しかり。 オレが今ここで何を演説した所でオレと姫川の将来は無い。 そんな薄い関係なのにこんな大層なイザコザに巻き込まれんなら今日は城山と夏目と遊んどきゃよかった。 「帰るわ。ヤる感じでもなさそーだしな」 「待て」 ソファを立つと姫川の重い声が引きとめて来た。 いやにまじめなトーンの声。 振り返ると、姫川らしい悪趣味にテカテカ光るワニ皮の長財布から嫌味に札で札を束ねた一塊をオレに差し出して来た。 「は?」 「車で帰るだろ?」 「お、おう」 「蓮井は久我山に待機させるから、その辺の車捕まえろ」 元々領収書切ってまで姫川からふんだくろうとしてた金だ。 それもハイヤーに乗って帰っても余裕で釣りが来る額。 話し合いも終わったしこのまま帰っても何の不都合も無い。 「…………。」 だけど。一瞬でも手切れ金だと思って動揺した自分に違和感があった。 手切れ金ならそれはそれでいい。 金で解決したがる下衆さは承知の上だし。初めてヤった時だって、疲労と処女喪失の余韻に動けなくなったオレの枕元に万札を降らした性格のひねまがった奴だ。 手切れ金にいまさら動揺もおかしい。 この動揺の正体は分析しない方がいい。 しない方がいい、のに。 人間、開けるなと押し込めた物ほど見たくなるものだ。 思考が勝手に動揺の分析をして、その正体が『姫川との関係を終わらせたくない』という感情だと教えてくる。 本当は金を渡される前に、『待て』と姫川が声を掛けて来た時から分かっていた。姫川が引き止めてくれる、なんて期待を持ってしまった事に気づいた時から分かっていた。 久我山を帰してオレを選ぶだろう、と思っていただけに逆の結果に動揺したのだ。 久我山とオレだったら、今仲のいいオレを選ぶ。 セックスしてるから女としてもオレを選ぶ。 そう思ってしまっていた。 でもよく考えれば、姫川とオレが連るみだしたのはここ半年で、こいつらは幼稚園から一緒。 セックスなんてしてようがしてなかろうが、 『唯一の友達だった』なんて思い出話を語るぐらいだ。 しかも婚約者なんだから姫川にとって絶対の女だ。 そういえばオレは姫川に友達だとすら思われていない。 ヤり終わって、ベッドでダラダラしながらテレビを見てたら寿司屋が特集されていた。 隣にいたし、何気なしに明日行こうと誘ったら──、 『俺が休みの日潰してまでお前に付き合う意味って何?』 そう、弄っていた携帯から視線すら上げず冷淡に言われた。 その時はそりゃそうか、と別段何も思わなかったが。 飯を一緒に食う仲にさえなっていないのだ。 何がオレを選ぶだよ。 まったくオレとしたことが馬鹿で恥ずかしい勘違いをした。 穴があったら入りたい。 マジでさっさと帰ろう。 「金、多すぎだろ」 差し出された万札の束から一枚抜く。 久我山の視線を感じた。 顔は見なくても姫川がオレを引き止めなかった事に満足を得ている雰囲気が伝わる。 姫川も姫川で悪びれるそぶりも無く、オレを見た。 目が合って気づく。 姫川の目からオレへの興味が消えていた。 たった半年だけど近くで見ていたから分かる。 ナンパした女と一晩遊んだ朝にはもう、移り気な姫川は興味を無くしている。 その時と同じ冷めた目だった。 姫川は、飽きた遊びの女には今みたいに金を渡していた。 「援交かよ」とからかうと、『妊娠した時は渡した金で堕ろせ、俺とは関わるな』という意味で渡しているのだと外道な事を表情ひとつ変えず言っていた。 (勿論ゴムで避妊はしていたが、 中出し出来ない鬱憤は全部オレに回ってくる) 女も女でその金を貰って『ありがとう』と嬉しそうに帰っていくバカ女達だったが。 それを思い出したのは──、 「いいんだよ、この額で」 と姫川が強引にオレに金を握らせたからだ。 なんであの女達はあんな笑顔を浮かべられたんだろうか。 今オレの胸には重い何かが膨らんでるっつーのに。 この金を受け取ったらもう姫川とは終わり。 こうやって会うこともなくなるんだろう。 途端、心臓が早鐘を打つ。 札束越しの姫川の手。 坊ちゃんらしい、テメーの手は汚さない綺麗な手に握られてジワと汗が滲む。 「いらな、」 「この金の意味分かるだろ? いらねーなら帰り道にでも捨ててくれ」 オレの言葉を遮ってでも言う事か? 移り気は今に始まった事じゃないが、何でこう急なんだ。 いくらセフレだって別れには心の準備がいるだろ。 血液型占いなんて信じないが、こいつだけは当てはまる。 人を振り回して、 好き勝手で、 傍若無人で、 ワガママで、 俺様で。 挙句に訳の分からないタイミングで急に冷める。 もうやだ。 もういい。 「わーったよ。もう来ねーよ」 差し出された金を受け取った。 夏目と城山を呼びだして、この金で朝まで遊ぼう。 今まで姫川に身体差し出してきた金だ、なんつったら城山は泣くだろうか。 ていうか、だったらもっと寄こせよ。 一晩だけの女と同じぐらいじゃ何度も相手してやったのに割が合わない。 妊娠こそしねーけど、中出しの始末もせずさっさと寝るんだから手間賃としてもっとよこせや。 あーヤリ捨てされた。 よくよく考えれば遊びの女以下だった気がする。 姫川はオレを、『自浄装置が付いた高機能オナホ』ぐらいにしか思ってなかったんだろうな。 馬鹿だなオレも。 まぁいい。 別に金が欲しいわけじゃない。 でもなんていうか。 ムカつくでもないし、悔しいでもないし……。 胸の辺りがぐるぐるする。 気持ち悪い。 喉もチクチク痛い。 風邪か?風邪だ。 昨日、なんかコイツやたら機嫌悪くて手酷い乱暴なセックスされた。まぁヨかったんだけど。 機嫌悪くてガツガツ八つ当たりみたいにしてくる癖に、ちゃんとオレが好きな所も叩いてくる。むしろヨすぎるぐらい。 イきすぎて疲れたから、やめて欲しいつっても昨日はやめてくれなかった。で、失神して目が覚めたら朝だった。しかも姫川も疲れて寝たらしく裸で放置されてた。 そりゃ風邪も引く。 今日はその謝罪とセックスのやり直しって呼び出されたのに。飯だって──、 『この前の寿司屋、まだ行きたいなら奢るわ。 つーかもっと良い会員制の店連れてってやるよ』 って言われたから来てやったのに。 のこのこ来て風邪悪化させるとかバカバカしい。 最悪だ。 マジで喉痛い。 早くアイツらを呼び出そう。 忠告を聞かないからだよと笑う夏目と、 泣く城山を見れば気も紛れるだろうし。 「じゃあな……姫か」 「もういいよ姫川!ごめん悪かった」 踵を返した時、冷たいしなやかな手がオレの腕を引いた。 「ごめんね。帰らないで、神崎」 振り返れば、これまでの勝気な態度が消えて伏せ目がちな久我山が頭を下げてきた。 「な、何だよ」 「ごめんね、試したんだ君を。姫川にも協力して貰ってね」 「……は?」 「君が姫川を遊びの関係と思っているのか、 本気なのか知りたかったんだけど、 まさか君が姫川を想って泣くとは思わなくて」 「え?え 何。いやつーか泣い、てねぇし」 「ゆっくりまばたきしてみろ神崎」 「は?」 「いいから」 姫川に言われるまま深く瞬きするとボタボタ涙が落ちた。 慌てて手の平で拭う。 「え、なんだこれ、いや、違っオレ泣いてなんか……!」 「途中から目、真っ赤になってたよ。本当にごめんね」 「な?わかったろ久我山。 口では絶対言わねーけど神崎も俺の事好きなの」 さも当然のように表情ひとつ変えずに言う。 腹の底から怒りが沸いて抗議の1つ2つを言いたい。 それなのに、風邪の周りが早いのか妙に喉が絞まる。 キュウゥと痛んで、それでも無理やり声を出すと思ったより震えた声が出た。 「好きな、わけあるか」 「あるじゃん」 「あるだろ」 根性が悪い二人が食い気味で声を重ねてきた。 腹の立つ。 「ああ、悪ぃ。好きじゃなくて大好き?」 「ちが……っ」 「大体なぁ、」 姫川が久我山の耳をふさいで、 「キスねだりまくって、 抱きつきながらイきたがるなんてバレバレなんだよお前」 そうニヤケ顔で言い捨てて久我山から手を離す。 何言ったの?と振り返る久我山は、 姫川のドヤ顔と、どうせ真っ赤だろうオレの顔を交互にみて大体を悟ったらしい。 ふふ、と笑った。 「バレバレつーか……本当にお前の事、 特別 その……好、きとか思ってねーし……」 「あーなるほどね。姫川、君こういう子好きだよね。 恋愛に疎いっていうか、ウブっていうか」 「こ、こーゆー子って言うな!」 「まぁ。そんな訳」 肩が抜けんばかりの力で姫川に腕を引かれる。 体が姫川の胸にぶつかって後ろから抱きとめられる。 ふんわり香る姫川の香水と姫川の体温に、なぜか体から一気に力が抜けた。 「泣かして悪かったな。 俺フツーに遊びじゃなくてお前の事好きだから」 耳元でそう囁かれて、頭をポンポンさすられる。 何様なんだと思うも一瞬、胸の中にじんわりよくわからない感情が溢れてきて、振り返って姫川の首筋に顔を埋めた。 「殺、すぞ」 大きく息を吸うと、いつもの姫川の匂い。 そのなじみ深い匂いを胸いっぱい吸うと、 さっきまで息苦しさでドクドク打っていた心臓が まだ速度を増してまたうるさく鳴る。 でも今度は全然苦しくなくて、むしろ心地いい。 いい匂い。 「あーなんか分かるよ、君が神崎の事好きなの」 「だろ。素直でいー子なのよ、この子」 「まったく。安心しきっちゃってさぁ」 背中を撫でる姫川の手が気持ちいい。 段々と不整脈も治って来て、オレを挟んで話す二人の会話に耳を傾ける余裕だって出てくる。 「約束だからな、神崎が俺を好きな間は邪魔すんなよ」 「うん。まぁ、神崎が君みたいなひねくれ者、 ずっと好きだとは限らないしね」 「そーだな、神崎に捨てられたら貰ってくれ」 だからちょっと。 今まで言われっぱなしだった分、久我山に一石投げてやる。 姫川が無駄に金を掛けてるアロハシャツに鼻水やら涙やらをなすりつけてから真っ直ぐ久我山を見据えて言った。 「ずっと好きだし」 「おー認めた」 「わー認めた」 また二人同時に声をかぶせてきた。 驚きに目を丸める表情まで一緒だ。 ムカつく。 息ぴったりな所を見せ付けてくるとか幼馴染てのは卑怯だ。 どうしたって過すごしてきた年月は追いつけない。 「オレはマジで言ってんだぞ。別の男探せ」 「ふーん、じゃあ私もマジで返すよ」 「な、なんだよ」 「確かに私は許婚の座にあぐらをかいて距離を置いた。 でもまさか、その間に姫川に心を許す相手が出来て、 しかも性格破綻者で顔と家柄しか取柄が無い姫川を 泣くほど好きになる人間が出て来るなんて思わない」 「随分ボロカスに言ってくれんじゃねーか、久我山……」 「寄って来るのは金と顔目当ての 小バエだと思っていたんだけどね──」 凹む姫川を前に、実際友達も本命も出来るタイプじゃないだろ、という棘は飲んでやった。 「私は中学までは姫川を独占していたからね、 だから今はいいよ。貸してあげよう。 でも少しでも姫川に飽きがきたなら、 その時は容赦無く返してもらうから」 挑戦的に笑む久我山に反射で姫川のシャツを握ってしまう。 それに気づいた姫川が肩を抱き寄せてくる。 さっきそこで鼻水を拭いたから抱きしめられたくない、と思いつつもあまりにも締められたもんだから思わず言葉が押し出されてしまった。 「もうオレのもんだし。これ」 「……」 「何だよ、何か言えよ」 「いや、なんか私がキュンって来たから。 そうか、これが姫川の好きな女子力……」 「だろー超かわいーんだわ、これが。お前も見習え」 「うるせーな!もう帰れよお前。 姫川が呼んでんのはオレなんだかんな!」 「わかったよ、でも忘れないで」 「な、んだよ」 「友人歴も生物学的にも私が優位。しかも私許婚だから」 最後の最後に判りきった事実をぶつけられて 何も言い返せなくなる。 ガンを飛ばそうにも、ド直球な正論に目を伏せるしかない。 でも取られたくない。 一回手放したくせに取り返しに来るなんて筋違いだ。 それを言いたいのに、久我山の正論の前に何も言えない。 ちらっと姫川を見た。目が合う。 『安心しろ、俺はお前の物』そう囁いて背中を撫でてくる。 「泣かすなつってんだろ久我山」 「あはは、ごめんね神崎」 「泣いてねぇ」 「まったく。普通男女逆だぞこれ」 「消えろ!」 撫でる姫川の手を振り払って勢いだけで久我山を睨む。 が、腹立つことに久我山は余裕なオーラを撒き散らして笑むだけだった。 「うん帰るよ。君を見習って可愛げを勉強しなきゃね」 「はいはい、おつかれさん。ドッキリ立案どーも」 「君にいい友達が出来たことを知れてよかったよ」 「オレと姫川はダチ以上だつってんだろ!ばーか!」 「じゃあ私と姫川の結婚式の友人代表は君だね」 「ぐっ……」 笑って部屋を後にする久我山の背を姫川が追う。 「え、姫川」 「見送ってくる」 「どこまで行──」 「大丈夫大丈夫」 反論するなと言わんばかりにオレの頭に軽くキスを落として玄関へ行ってしまう。 オレのいない所で「お前が一番」とか言ってないか? なんて不安も今はもう信じるしかない。 口を開けば嘘しかつかないあの姫川を。 不満はあったが帰ってくるのを待つしかない。 静かになった部屋に残されると、どっと疲れが来てソファにダイブする。寝転がって、ぼんやり天井を見ていると、心臓がようやく落ち着いてきたように感じた。 喉の痛みは引いていたけど、頭がズキズキ痛む。 怒涛の勢いに感情が追いついてないが堂々と好きだと言って、姫川もオレを好きだと言った。 その恥ずかしさが今になって込みあがってきた。 火が出そうな顔を腕で隠せば異常な体温が伝わって来た。 やばい熱まで出てきた。本格的に風邪だ。 こんな顔、姫川に見せられない。 はやく冷まさなきゃ、 なんて思っている間もなく廊下から玄関ドアの閉まる音。 戻ってきた姫川がオレの上に乗っかってきた。 「顔見せろ」 あっけなく、腕をどかされてしまう。 姫川はオレを見て笑った。 「真っ赤」 「なんか風邪がどんどん酷くなってきたっぽい……」 「は?風邪?何言ってんだお前。 さっきまでピンピンしてたろーが」 「だって喉痛かったし、頭痛いし、熱いし」 「お前それマジで言ってんのか?」 やばい。 こんな物言いしたら今日はセックスしたくないって 言ってるようにも聞こえたかもしれない。 無表情になってしまった姫川に慌てて違うと首を振った。 「あっ、ちがくて、今日はヤりたくねぇとかじゃなくて、 体も別にだるくはねぇし!でも移るかもしれな──、」 「すげーな、天然かよお前」 「は?何が?」 「喉が痛かったのは泣くの我慢したからだろ。 頭いてーのは久久に泣いたから。 熱いのは俺に照れてるからだろーが」 「……そーなのか?」 「そうだよー?ほら」 こつんと姫川が頭突きしてきた。 頭突きというよりこれは、多分、あれだ。 熱を測る的な。 だって……くっついたままだし。 「はい、熱なーし」 「え、あ……そうなんか?」 「うん」 目が合って、そのまま当たり前のようにキスに── なるかと思いきや寸止めした姫川がいつもの企み顔で笑う。 「おかえりのちゅー、くれる?」 「はぁ?そんなの今まで一回も」 「いいじゃん、俺の事好きって認めたんだし」 それまでのドライな感じとは一気に打って変わる。 でれでれな姫川は違和感満載だが、本当は姫川もそうしたかったんだと思うと下衆なイメージしか無い姫川ですら可愛く見えてくる。目の前にある顔を引き寄せて唇に触れてやる。 「短っ」 「き、ききキスはキスだろ」 「でもまぁ、お前からしてくれたのは初めてだし。許す」 「何様だよ」 「お前の彼氏様」 「か、彼氏……って何か引く」 「照れんなって。お返しにキスしてやっから」 「えっ、う……うん」 こっからセックスに持ち込まれるのかと思って身構えたが、 今までとは違う、やる前のやらしいキスじゃない。 ついばんで、指で唇をなぞってピアスに触れる。 ただそれだけ。 ただそれだけなのだが、逆にそれが何より恥ずかしい。 「ちょ、マジ、いきなりイチャつこーとすんのやめろって」 「我慢してた分イチャつかせろよ」 「我慢とかお前らしくねーじゃん。ほんとかよ」 「だってお前、嫌そーな顔すんだもん。 構いすぎると遊んでくれなくなると思って」 「嫌そうだったか?」 「だった。単に照れ隠しだったのかもな。 まぁでもこれからは甘えさせて」 「あ、あ、あ甘えるって、オレ、よくわかんねぇけど」 「さっきみたいに素直にくっついてくれればいーよ」 「お前もくっついてくんの?」 「うん。嫌になったらポイでいーから」 「捨てねーもん」 「本当に?卒業しても?久我山が力づくで奪いに来ても?」 「………たぶん」 「うーん」 小さいため息と共にオレを撫で回すのをやめた姫川は、 ソファを立って部屋を出てしまう。 演技といえども、ついさっきまで冷たい態度を取られただけにそれだけで不安が胸に走って、 「姫川?どこ行──」 つい追いかけて部屋を出たところで、 ドアの影から伸びてきた腕に後ろから抱きとめられた。 「え、何」 「バレバレだって教えてやったのになぁ」 「何が?」 「お前、俺がお前から離れる時、どこ行くか訊くじゃん」 「そうか?」 「言わないで離れると、こーやって付いてくる」 思い返せばそうな気もする。 最近は姫川の方から、ブランケット取ってくるだの、便所だの。行き先を告げてから行くことが多かったから忘れてたのかもしれない。 ていうかそういう所までお見通しだったと思うと、思い返せば思い返すほど顔が火照る。 絶対に今顔を見られたくねえ。 っていうのもどうやら見通されたようで、腹に回った手が肩に回って壁に押し付けられた。 目の前に姫川のすました顔が近づいたかと思うといつも通りの噛み付く様な深いキスをされる。 姫川の長いエロ舌が今日はやたらにやらしく絡んでくる。 元々その気で姫川の家に来てたし、あんな事があっても腰に力が入らなくなって仕方なく姫川の首に腕を回す。 「好き」 一瞬口を離したと思ったらマジな目がオレを見て短く囁く。 返事も反応もする暇も無くまたすぐ噛み付いてくる。 卑怯だ。 攻められっぱなしでオレだけこんな心臓おかしくなる程動揺してる。お前だってオレに照れるとか、目ぇ見れないとかなんとかしろよ。 つってもこいつには慣れる時間は大いにあっただろうし。 テメーがオレに慣れてからドッキリ仕掛けるとかマジ卑怯。 卑怯なんて言うと、もっとこいつを喜ばせるだろうから言わないけど。 「くる、し」 「えー」 いつまでもしつこい姫川の肩を押す。まだやりたかったらしい姫川は少し不機嫌そうな表情を浮かべてオレを押し付けたまま壁にもたれかかってくる。 「我慢出来ねぇ、もっといい?」 いままで性欲に関しては我慢したことねーだろ、とは思ったが珍しくがっつく姫川を前には言えなかった。 「いいけど、なんか、いつもとお前ちが、くね?」 「好きな子に好きって言われて興奮しねぇわけねーだろ」 「え、あ……コーフンしてんだ、お前。……オレで」 「今日手加減できねぇかも」 「昨日より?」 「昨日……は、悪かった。でも今日もスゲーやりてぇ」 「優しくしてネ?姫川クン」 初めて見る妙にギラついた姫川の目に半分怖くなって、半分期待した悪ノリで言ってみれば耳元で姫川が笑った。 「もう一つ教えてやろーか」 「な、なんだよ」 「最初に乱暴にした後、優しくしてやるとイきまくる」 「オレが?」 「お前が」 「嘘付け」 「最初から大事にヤると物足り無さそーにしてるし」 「んなの、お前の主観だろ」 「いいや?神崎君は体も正直だからねー」 「変な言い方すんじゃねーよ!」 「最初乱暴にした後、優しくすると愛されてますってのが 強調されるんだろーなぁ」 「うっせーよ!そんなの知らねーもん!」 「今教えたから覚えとけ、俺に構われたがりなんだよお前」 「ていうか、……だったら優しいだけがいい」 「……うっわ何これ、すげえ素直」 腕が腰に回ってきたと思ったら、体が浮く。 「な、なに」 抱えあげられるのなんて初めてかもしれない。 思ったより高さがあって、反射的に姫川の頭に腕を回す。 もう大分自慢のポリシーが乱れて来た。 ざまぁみろ。 「何ってお姫様だっこ」 「優しくしろってのと、女扱いしろってのはちげーけど」 「まず声が嬉しそうなのどうにかしろよ」 寝室のドアを蹴って無駄に広いベッドに雑に落とされる。 最後まで徹底しない女扱いっぷりは実に姫川らしい。 多分こういう所が好きなんだろうな。 よくわかんないけど。 そういえば、こいつは誘ってきた時からオレに気があったんだろうか。オレは途中からはいざしらず、本当に最初は気なんてなかったけど。むしろまだ嫌いの部類だったと思う。 「なぁ、最初にヤった時からオレの事好きだったの?」 遠回りせずズバっと訊けば、 姫川はもう、興奮なんてどこにも感じない、いつも通りの ポーカーフェイスで淡々とオレの服を脱がしながら言う。 「じゃねーと誘わねーだろ」 「だからあんなしつこかったんだな、お前」 「うん。オラ腕あげろ。はいバンザーイ」 言われるまま万歳する。 慣れた手つきに服を剥がれて、 ぷはっと顔を出した所でキスを落とされる。 「ちょっ、キス多すぎんだけ……ど」 「嫌?」 「嫌じゃ、ねーけど……なんでこんなにすんの?」 「俺を好きだって事、お前が自覚したから」 「前からしたかったって事か?」 「うん。お前が俺に落ちるなんて考えてもなかったから、 正直かなり嬉しい」 「お、おう」 「ずっと前からお前しか見れねーし興奮もしねぇ」 「いやそれは嘘だな。女やめれねーだろ」 「女は、お前が嫉妬するかもって思って。少しはしたろ」 「まぁ……かなり」 でも、こいつそれなりに楽しんでたよな? あれ?オレ今姫川お得意の話術に言いくるめられてる? あ、そうだ。 だったら。 「飯!」 「あ?」 「飯誘ったら、お前と行っても意味ねぇって言ったよな?」 「ああ、あれね」 危ねぇ。 マジで危ねぇ。 姫川がそこに気づいたか、と言わんばかりに面倒くさそうに頭を掻いている。 ほらな、嘘だったんだろやっぱ。 好きなんて嘘で、オレが泣いたりしたから哀れに思って、 「俺、そんな言い方してないだろ?」 「あ?」 「休みの日にお前の飯に付き合う意味ってなに? 的な事を言ったはずだけど」 「それだよそれ!」 「お前、本当直球で言わないと伝わらないんだな。 そこが可愛いけど」 お前はなんでそんな回りくどい言い方しか出来ないんだよ。 だから友達が出来ないんだぞ。とはオレは言わない。 だって多分、オレは姫川のこういうひねくれた所が好きだから直されたりなんかしたら困る。 服を引っ張って続きを急かす。 「いや、だからね?休日に一緒に飯食いに出かけんだぞ? わかるかなァ神崎クン」 「は?うん。城山と夏目とよく行くけど」 「いやセックスしてる仲で、俺が奢る飯だぞ?」 「ん……?つまり?」 「だからそれってどういう事?」 「???」 「普通なら、『恋人、みたいだね?』的な事言うじゃん」 「知らねーよ」 「うん、伝わんねーだろーなって思いながら訊いたけど、 やっぱ伝わってなかったな」 「ならそう言えばいーだろーが。 休みの日にも飯食い行くって付き合ってるみてーとか」 「俺を好きって自覚してねーお前に言っても キモがられて終わりだろーが」 「……ああ、それもそーか」 姫川が大げさにやれやれとため息を付く。 つーか何だよ。 何回か姫川にこの手の『つまり何が言いたいんだ』的な回りくどい事を言われてた気がしたが、あれ全部オレが姫川の事好きなのを気づかせるために言ってたのか。 「すげー地味にがんばってたんだな、お前」 「そう。はぁ~。やっと落とせたか」 痛いほど抱きついて来る事も褒美によしとしてやろう。 「あーやば幸せ。ホントお前とヤんのマジ幸せ感すげぇ」 「きもちわりーな、何素直に語ってんだよ」 「これからは直球で言葉にしとかねーとな」 照れ隠しなのか、我慢の限界なのか。 話は終わり、と言い捨てた姫川ががっついて来る。 いつもと違って姫川が触る場所が妙に反応してしまう。 変な事を言うから変に反応して止まらない。 「神崎、お前今日すっげーエロい」 ぶっちゃけオレも思う。 姫川が触る所、触る所がもれなく全部反応してしまう。 姫川に触られるのが嬉しい、 なんてヤバい事を自覚してしまったからだろうけど。 こんなクズ相手にどろどろに惚れさせられて、 大事な最後の高校生活終わったっぽいが、 いま胸にあるのが姫川の言う幸せ感なら悪い気はしない。 「なぁ、神崎。もう一回言って、好きって」 得意のポーカーフェイスを作れなくなるほど照れてる姫川が見られるなら これからはデレてやってもいいかもしれない。 「好き」 「あー。ヤバい来る」 「姫川」 「ん?」 「もうお婿さんにいけねーようにしてやろーか」 「何それ」 「オレの中でしかイけねー体にしてやる」 やれるもんならやってみろと笑う口に噛み付く。 舌を絡ませてやればみるみる姫川の体温が上がった。 なんだ、お前の体だってバレバレじゃん。 END
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