俎上の懇願
「お!」 浅夜、ホテルのロビー。 ちょうど訪ねようとしていた相手が向こうからやってきた。 パーカーのフードを目深に被っているが、あの猫背と気怠げな歩き方は間違いない。 「よお神崎」 「うげ、東条……」 「風呂帰りか?」 俺に気付くなり踵を返した神崎の手首を掴み訊けば、面倒くさそうな表情がうなずいた。 「手ェ離せ。イテーよ馬鹿力」 「あー悪い」 振り払われるも手首をさするだけで逃げる気配は無い。 改めて神崎を眺めてみると、パーカーの上からジャケットを羽織っているのに、下にも2枚ほど着込んでいる。 沖縄とはいえ11月の夜は冷える。 が、それにしては厚着だ。 風呂上りなら尚更だ。違和感はそれだけじゃない。 「いつもの取り巻きはいねーのか?」 「……見りゃあ分かんだろ」 神崎が目を細めて分かりやすく警戒を強めてしまう。 仕方ない。世間話でも挟むか。 「さっき楽しかったな」 「さっき?」 「自販機前で南珍とケンカしたろ」 「ああ。つってもお前が暴れ倒しただけだろ」 「気づいたらお前らいねーんだもん」 「二葉連れたままテメーのそばにいられるかボケ」 「そーいや、あのチビっ子怪我なかったか?」 「ねーよ。夏目と城山が部屋で寝かしつけてる」 「で、お前は一人風呂ってわけか。ふーん?」 「なんか悪ぃのかよ。テメーも風呂入って寝ろ」 「まあ待て待て、まだ用は終ってねーから」 「はぁ?なんだよ、オレ部屋戻りてーんだけど」 「姫川はどーした?」 そう切り込むと案の定、神崎は何も言わず俺に背を向けた。 まるで餌付け途中の懐くか懐かないかの微妙なラインの野良猫だ。性急に手を伸ばせば逃げてしまう。かといって、懐くまで気長に待つのも性に合わない。 本当は風呂帰りでない事なんか百も承知だ。 神崎が向かおうとしていた先は、姫川の部屋があるスイートエリアと夜景を望めるテラスだ。 神崎が一人夜景を楽しむはずがない。 沖縄の雰囲気にあてられて気まぐれを起こしても、まず一人では行動しない。しかもこんな変装めいた格好をしている理由といえば、ただ一つ。 神崎が懐くまで気長に待った姫川の部屋に行くのだ。 まったく持って羨ましい。 野良猫から擦り寄って来た時の嬉しさといったら。 俺には出来ない芸当だ。俺に出来る事といえば、強引にとっつかまえて暴れて引っかいてくる猫にマタタビ嗅がせて力の抜けた所を抱いて楽しむぐらいだ。 動物好きとしては本懐じゃないが、相手は縄張り争いを好むボス猫だ。 元々懐くような猫じゃないし、プライドも高い。 多少強引なぐらいが丁度いい。 「待てよ、神崎」 神崎の腕を掴むと、 振り返った神崎は呆れ顔を浮かべ大げさに溜め息を吐いた。 「調子のんなよ東条、離せコラ」 「ヤらせろ」 腕を掴む手に力を込めると鋭い目が俺を見上げて睨んだ。 効かない威嚇だ。 かわいい。 「っ痛てぇな……マジで殺すぞテメェ」 「お、いいぞ。やるか?」 「……」 掴まれた腕を振り払う事も出来ないくせに、 強がって見せる姿がいじらしい。 「まぁこっち来いよ」 チラチラと周囲の視線が刺さり始めたものだから、神崎の腕を引いて人気のない廊下へ。 俺に連れられながらずっと逃げ出す隙を探していた神崎の頭を撫でてやった。 「んだよ。触んな、離せってば」 「な、いいだろ?強引な事はしたくねーんだって俺も」 「人様殴って半分死んでんのに構わずヤる奴がどの口で」 「黙ってヤらせてくれりゃ可愛がってやるつったろ」 「だから嫌だって何回言や分かるんだよ脳筋」 「なんで嫌なんだ?」 「はぁぁ?マジで言ってんのかお前」 「マジだ。わからん」 「オレ、姫川が好きって前言ったよな?」 「でも別に減るもんじゃないし気持ちいいだろ」 「あのなぁ…普通はよ、姫川以外とヤりたくねーんだよ」 「なら俺を姫川だと思ってヤらせろよ」 「思えねーよ。お前のやり方怖ぇんだよ」 「ほう?」 腕を壁に押し付けそのまま体も壁へ押しつけてやる。 怯む神崎の首元を舐めれば、ふんわり石鹸の匂いが香った。どうやら風呂帰りなのは本当だ。 でもきっとこれは姫川に会うから。うん、いじらしい。 飼い主に可愛がって貰う為に、せっせと毛繕いをする猫。 なんていじらしくて、可愛い。 「うっ、やめ、ろ東条」 震えた声が静止を求める。 困り顔から泣きそうな表情に変わった。ますます腰に来る。 姫川の為に綺麗にした体を横取りされるなんて可哀想だな。 「なんでオレなんだよ」 「ん?」 「お前も女寄って来るだろ。オレ、やだつってんのに…」 もう声に力が無い。 掴んだ腕もくったりと力が抜けてしまっている。 小動物ってのは哀れだな。警戒も威嚇もしっかりやっているのに、あっけなく捕食される。 逃げ出せないと判っている小動物は、それでも食われる寸前まで怯えを隠して、一生懸命自分は旨くないと無力ながらも最後まで抵抗を試みる。そんな感じだ。 流石にかわいそうになって来て腕の拘束を解いて悪かったと頭を撫でてやる。 「なぁ、どう恐いんだ?そうしないようにする」 「え?えっと……」 言いかけた癖に、テメェとはしねえとまた暴れ出す。 が、服の上から細いわき腹をなで掴むと、 すぐに力が抜け、壁に体を落とした。本当に素直な体だ。 ここまで仕上げてくれた姫川に礼を言いたい。 「……わかった、わかったから」 「お?」 「姫川の後でいいか」 「ヤらせてくれんの?」 「だってお前言っても聞かねーし……。  殴られたり無茶苦茶されるよりマシ」 「でもなぁ逃げそうだしなぁ、  いっそもう姫川の所いけねぇように跡つけてやろうか?」 「は!?だ、だめ、マジでやめろバカ!」 懇親の力が頭を押した。よほど姫川にバレたくないらしい。 「ピアス、持ってっていいから」 「この赤いの?人質的な?」 「そーだよ、絶対無くすなよ」 いつもちゃりちゃりと神崎の耳元で揺れる赤い石。 確かによく変わるピアスの中で、持ってけと言われたピアスはいつも付けてるように感じる。 じゃあと引っ張ると痛いと神崎がわめいた。 「いてぇな、引っぱって外れるかよ脳筋!外すから手離せ」 「じゃあ変わりに」 逃げないようにと腰を掴むとぴくんと身体がはねる。 本当に感じやすい。 俺を軽く睨むと黙ってピアスを外し眼前に付き付けてきた。 「なあ神崎、1つ条件いいか?」 ピアスを受け取りながら訊くと恨めし気な目が俺を見た。 「あんだよ」 「姫川には中出しさせんの?」 「はぁ?ゴムするわボケ」 「中出しされて来い。で、そのまま俺の所来いよ」 「いやいやいや……変態かよ」 「面白いだろ?」 否定するのも疲れたらしい。 呆れ顔でうなずいて俺の腕から離れていく。 「姫川んとこ出たら連絡すっから。このロビーで待ってろ」 「いや、10時にここな。2時間もありゃ十分だろ」 「死ね」 神崎は舌打ちして、力なく姫川の部屋へ向かって行った。 * それからちょうど2時間。 ロビーへ行くと、上質なソファに大人しく座る神崎がいた。 いつも大股開いて腰でだらしなく座る神崎が足を組んで座る様子からするに、バカ正直に中出しのまま来たらしい。指示に従う神崎に妙に心躍った。 「よっ」 「死ね」 「何だよ機嫌悪いじゃん」 「悪いにきまってんだろ」 「すぐ、よくしてやるから」 頭を撫で、手を差し出すと神崎は黙って手を取った。 「あ」 立ち上がった神崎が俺の腕にしがみついて顔を赤く染める。 「流れてきたか?」 訊くと不安気な目が俺を見て小さく頷く。 「姫川になんつった?」 「あ?」 「おかしく思うだろ。中出ししたままで帰るなんてよ」 「風呂行くつった。一緒に入ろうって言われたけど……」 「けど?」 「いいって出てきた……」 声がか細い。伏せたまつげが少し震えてる。 ああ、まずい泣きそう。 本当はもっと長い事居たかったんだろう。 姫川の隣でそのまま寝たかったよな?なんてダメ押しすれば、悔しさで泣き出す勢いだが、泣かすのはまだまだ早い。楽しみはとっておかないとな。 「行くか」 連れ立って歩くと、歩きづらそうに神崎がついて来る。 「なあ」 くい、と袖を引かれて振り向けば、口ごもる。 「その……、」 「やっぱり明日とかはナシだぞ」 「いや、どこでやんの」 「俺の部屋」 「お前って陣野とメガネと一緒だろ」 「どっちも眼鏡なんだが」 「分かれ馬鹿」 「はは、あの二人なら少し出てもらってっから安心しろ」 「まぁ……なら。帰って来るまでに済ませろよ」 納得したらしい神崎を連れ、部屋へ戻る。 が、部屋の前にいたかおるに神崎の表情が凍った。 「あれ、戻ったのか?かおる」 「や、出て行く所だ。庄次が財布を忘れてな」 「そうか」 「ん?神崎……か」 俺の背に隠れた神崎だったが、いくら細身とはいえ俺に隠れるには無理がある。かおるの目がそういう事かと神崎を見て、俺を見る。とりあえず笑って返した。 聞くに、かおるも神崎を抱いた事がある。 それも、神崎から誘ったというだけに後ろめたさで日頃から神崎はかおるを避ける。 こうして鉢合わせした事は偶然だったが、背中から聞こえてきた舌打ちからするに、どうやら俺がわざと鉢合わせさせたように思わせてしまったらしい。 「あー東条さん、すんません今から出ます」 「おー悪いな出てもらって」 「いや全然……ん、なーんでお前が東条さんといんだコラ」 そこに来て、部屋から出てきた庄次が神崎にメンチを切るものだから背中越しでも神崎の機嫌が落ちていくのが分かる。 「庄次。いいから行くぞ」 理由を知るかおるが庄次を制してくれるが、俺がわざわざ出てもらうように計った相手が神崎であった事がどうも気に食わないらしい。やけに絡む。 「どーした神崎、だんまりかー?何か言えや?ア?」 「あっ、テメ……」 ぐいと胸倉を掴まれた神崎が眉根を寄せた。 衝撃で中の精液が足に伝ったのだろう。 無意識に尻を抑えてしまっている。 「いつもの威勢がねーとおもったらお前なに?  怪我でもしてんの?」 「別に。おい東条」 庄次の手を払い落とし、『早くどうにかしろ』と神崎の目が訴えてくる。 「そうだ、いー事考えた。  庄次だけハブってのは可哀想だし一緒に──、」 言い切る前に背中に鈍痛が走った。 割と本気の神崎の拳が腰に減り込む。うん、さすがに痛い。 振り返れば怒りに震える神崎が俺を睨み、首を振る。 「テメ!コラ。何東条さんに上等こいてんだ!アァ?」 「うるせえ!オレに上等かましてんのはテメーらだろが!」 「平和ボケしてんなら力関係思い出させてやるけどー?」 「おーやってみろや!」 声を荒げヒートアップしてしまう二人に、喧嘩を期待する南珍の野次と非難めいた声で騒がしくなってくる。我関せずと携帯を触っているかおるの仲裁も期待できない。 仕方ない。振りかぶった庄次の拳を止め、神崎共々部屋に押し込めた。 * 「なぁ、これもう無理だろ。帰っていーか」 ベッドに腰を下ろす神崎が気だるそうに俺を見る。 「そーすよ東条さん、俺コイツ嫌いなんすよ」 「オレのが無理だわ」 「あ?口の聞き方気をつけろや」 「お前がな。誰に口聞いてんだコラ」 「東条さん、このアホいります?俺が相手しますよ」 「フン、笑える。それいーじゃん、お前らでヤれよ」 「何が笑えるだコラ、いちいち癪に障るヤツだなお前」 「つーか、オレのがお前の事嫌いだし。  何上から目線で言ってんのお前?」 「いやー?だって実際上だし俺」 「あーもー、分かったから。どんだけ仲悪いんだお前ら」 確かに神崎の言う通り、今日は諦めるしかなさそうだ。 まぁ神崎を姫川の所に帰してやって恩を売るのもいいかもしれない。侘びに昼間買ったちんすこうでも持たせようと神崎に背を向けた時だった。 「ちょっと、ちょっと、何してんのお前!?」 庄次の声に振り向けば、 かおるが神崎を組み敷き深く口を塞いでいる。 「ンっんんー!」 驚きに目を見開き苦しそうな声を上げていた神崎も、かおるの長いキスにバカ正直な体は弛緩し始め、かおるのシャツを掴む手がシーツに落ちる。 「おいおい、かおるー」 うん、かおるがその気なら仕方ない。 かおるの意見を尊重する事にしよう。 問題は庄次。荒く呼吸する神崎と涼しい顔のかおるを交互に見て、それから俺を見た。 「えっ、ちょ何すかこれ?」 「虎、俺も仲間に入れろよ」 「そりゃあ構わねぇけど、庄次お前どうする?」 「どうするって……。え何をっすか?」 「神崎とヤるんだけど。あ、合意な」 「は、え……ヤるって、まさかっすよね?」 「まさかっつーか、セックスだけど」 「いやいやいや、神崎っすよ?神崎」 「まぁ、ハマるからお前も遊んでみろよ」 「は!?陣野はともかくコイツは無理……!」 かおるの下で体を起こそうともがく神崎をかおるに代わって押さえつけ、抗議しようと開く口に指を突っ込んで塞ぐ。 驚いた舌は硬直し、絡ませても何の反応もしてこない。 つまらない。口を離せば泳ぐ目が俺を見て、かおるを見て、そして庄次を見た。 「なぁ東条、冗談だよな……?」 「いやヤるぞ」 「虎、先にするか?」 かおるが俺を見る。かおるに流れを任せることにした。 任せたと肩を叩くと、 かおるは「嫌だ」とうるさくわめく神崎へ耳打ちした。 「痛めつけられたくなかったら大人しくしてろ。  明日も元気に『姫川と一緒の修学旅行』したいだろ?」 さすが、神崎のどこを突けばいいかわかってる。 かおるの一言で神崎も抵抗をやめた。 けれど困り顔が搾り出すように言った。 「どっちか一人……で」 「あ?」 「体きつい、から。二人とか無理なんだって、マジで」 「そんなに姫川と激しかったのか?」 「姫川と?」 かおるに経緯を言えば、『ああ』とかおるが納得する一方で庄次がいよいよ頭を抱えた。 「ちょっとまって下さいよ。  コイツと姫川とデキてんすか?……いつから?」 「そういやいつからだ?」 「……言うかよ」 「言ったら俺だけで終わらせてやってもいい」 「えー俺がヤりてーから連れて来たんだぞ。かおる」 そう抗議を送れば、かおるが口角をあげて俺を見た。 考えがあるんだな。ここは、かおるに任せるか。 「二年ん時。鬼束に拉致られて……」 「ああ、鬼束が姫川の策にハマって鑑別送りにされた話か」 「あれ?あの被害者ってお前だったの?女かと思ってわ」 「そう確か暴行されたって話だったな」 「やっぱザコいなお前。で?助けられて惚れたのか」 「ちげえ。別に鬼束ぐれえ自分でなんとか出来たし……」 「じゃあ何でそうなったんだ?」 「う……それは」 かおるの誘導にすっかり嵌められて言葉を濁らせる。 俯いて口を閉ざす神崎だったが、かおるが首筋に舌を這わせると慌てて叫んだ。 「お前らと一緒だったの、姫川も!」 「俺ら?」 「鬼束にボコされてヤられたオレにムラついたつってた」 「なるほどな。姫川も始めはレイプか」 「お前らと一緒にすんな!」 「え、いやお前が『お前らと一緒』って言ったんだが……」 「姫川は嫌だつったらちゃんと聞いてくれたし  最初はオレが気持ちよくなる事しかしてこなかったもん。  オレには優しいし。だから好きになったんだよ悪いか」 「あのな、お前らお前ら、って言うが  俺はお前がヤりたいつったから誘いに乗ったんだぞ」 「あ、ああ、あれ、あれは……!」 決定打を打ち込まれて、もはや泣き顔で俺を見る。 男の癖に分かってないんだな。そんな顔をされると余計興奮するだけなのに。 かおるを退かせて、神崎の体をうつぶせに返す。 抗議される前に下着ごと剥ぎ取って尻を引っぱたいた。 「いっ、何、やだってそーゆーの……!」 「東条さん!?」 庄次のうろたえる姿というのは珍しい。 手招きすると、渋々ながら俺の隣に来る。 「神崎、一人ならいいんだよな?」 「………一人でもやだけどな……」 「じゃあ庄次とでどうだ?」 「「はぁ!?」」 綺麗に二人の声が被った。 「いや、いやいや無理っす、俺。神崎なんかに勃たないし。  あ、いや東条さんの趣向を否定してるんじゃないっすよ。  男でも、まぁ古市みたいなのならまだしも……」 「オレのが無理だっつの!  東条でも嫌なのにクソメガネなんかもっと無理」 尻丸出しの格好でよくこれだけ喧嘩腰になれるもんだ。 二人が言い合いを始めたどさくさに紛れてかおるを呼ぶ。 代わりに神崎の体を抑えさせると、神崎がハッとして、息を呑んだ。 「濡らさなくてもいいよな?」 尻を左右に割る。少し赤らんだ孔に指を掛け、拡げるとトロと精液の塊が零れ落ちる。 上ずった声が漏れ、その声を枕に顔を埋めて隠す。 「うわうわうわ……いや、マジで……これ姫川のっすか?」 「うん。てかお前、姫川の精液で太ももベタベタだぞ」 無遠慮に赤みを孕んだ孔に指を埋めていく。 指の体積の分、溢れ落ちた精液が太ももを伝った。 「うう……んんん!」 枕の中に叫んだ神崎の高い声が庄次の気を引いたようだ。 目を細めて俺の指を飲む神崎の穴を見た。 叫んでいる言葉は音的に、嫌だ、触るなとかの類っぽい。 「ええ……コイツ勃起してんじゃないっすか」 引き気味の庄次の反応が神崎の羞恥を一気に極限まで追い込んだ。 耳が瞬時に真っ赤に染まり、ますます深く枕に顔を埋める。 「庄次、お前本当に知らなかったのか?」 「何が?」 「見ていて分からないか?」 「神崎なんて眼中に無いからなぁ……」 「それでも姫川の女になった時期から大人しくなったろ?  虎は本能で生きてるから、神崎から雌を感じたんだろ。  見事に食い散らかしてトラブルを招いてくれたよ」 「って、え?あれ、もしや合意じゃない……?コレ」 庄次が俺とかおるを見た。 それから声を出さなくなった神崎を見下ろす。 庄次の視線にかおるが嫌がる神崎の体を仰向けに返した。 「これが合意に見えるか?」 さっきまでの威勢がすっかり消え溢れる涙を瞬きで堪える。 それでも溢れる涙を乱暴に手の甲で拭った。 「やく、そくがちげぇじゃ、ん」 「あ?」 有無を言わさぬよう声を強めるとビクと神崎の肩が揺れた。怯えきってる。可哀想に。 「大人しくしてたらすぐ終らすっつった、のに」 「そーだな」 「オレ、ちゃんと時間に来たのに……  元々マワすつもりだったんだろ……」 「いや違うぞ神崎。虎は騙しうちはしない。  俺達は本当に飲みにいく所だったんだ。な?庄次」 「うん」 「……う、そだ、そんなの……」 神崎の手が震えていた。 可哀想に怖いんだな。マワされるのなんて初めてだろうし。だめだ興奮してきた。 「ほら、神崎もマワされる覚悟も決まったみたいだし。  な庄次。一回ヤらせてもらえよ。ハマるから」 「ちがっ、覚悟なんか……!オレ、まじでやだ、から」 「あのな神崎。一つ忘れてないか?」 「何を……」 「この中にお前が、力か口で勝てる相手がいるか?  この部屋にいる時点でもう無理だろ、あきらめろ」 言うと、神崎は黙りこくり、かおるを見上げた。 ブチ切れるかと思ったんだけどな。 「オレ、明日の自由行動……姫川と遊びたい」 「うん?」 「今日疲れたし、姫川としたし、はやく寝たい……」 「つまり?」 「石矢魔に帰ったら何でもするから今日は見逃してくれ」 「修学旅行は修学旅行させてほしいって事だな?」 「うん……」 なるほど、話が通じそうなかおるへ情で訴える作戦か。 かおるがどうする?と目で訊いてきた。 かおるは別にどっちでもいいんだろう。 俺がヤりたいといえば、かおるは賛成する。 別にいいやといえばそのまま神崎を帰す。そんな顔だ。 一方で庄次も俺を見ていた。 表情はサングラスで分かりづらいが、俺と目が合うと小さく首を横に振った。 「そうか、庄次。帰したくないか。ヤりたいかぁ」 「ええ!?え、あ!?そう取ります!?東条さん!」 神崎が恨めしそうな目で庄次を睨んでいるのがまた面白い。 「よし、じゃあ神崎。賭けをしようか」 「あ……賭け?」 「フェラで庄次を5分以内にイカせられたらお前の勝ち。  帰っていいぞ。ダメだったらこのままここでマワす」 「……ゴムは付けていいのかよ?  マジでコイツのとか触りたくも無い」 「は?いや俺のが無理だわ、殺すぞ」 「付けてもいいが、その分お前が不利になるぞ」 「……。おい相沢、お前もう風呂入った?」 「いや入ったけど、  せっかく入ったのにお前に咥えられたくねーから」 「いいじゃねぇか庄次。また入れば。  な?目つぶればわかんねーよ」 「うーん、東条さんの言う事は断れないっすから……」 庄次が渋々ベルトを緩めて隣のベッドに腰を下ろした。神崎が体を起こしてベッドから降りる。 神崎が庄次を見上げて、庄次が神崎を見下ろす。 二人して同時にため息をついた。 「5分どころか、無理すぎて勃たねーと思いますよ俺」 「うるせーな黙ってろ、噛み千切るぞ」 「あ?イラマしてやろーかテメェ」 「すれば?一分ももたねぇんじゃねーの」 よくフェラの直前までここまでいがみ合えるものだ。 神崎が慣れた手つきで庄次の性器を下着から引きずり出す。神崎がひるむ程度に長くでかい。 ため息をついて、俺を見上げて言う。 「……。おい東条、ちゃんと計ってろよ」 「おお、任せろ。かおるが頑張る」 「ん、俺か?まあいいが」 「あーマジか……萎えすぎてヤバイっすよ俺」 庄次が頭を抱えた。 かおるが腕時計を見て、いつでもと神崎と俺に告げる。 「じゃあ咥えたとこからな。  お前のタイミングでいいぞ神崎」 「……約束守れよ」 神崎は俺を一瞥すると、 一呼吸置いてぱくっと亀頭を口に入れた。 「んっ、ふ」 「うわ、マジかよこいつ……」 庄次の体がのけぞる。神崎も神崎で本気らしい。 これまでやる気のないフェラしか見た事なかったが、のっけから頭を振って、喉を使っている。耳まで真っ赤にした神崎から、AV顔負けの音が口と喉から漏れる。 「1分」 「っ、げほっ、げほっ……んっ、はっ、ぁ」 腕時計を見つめるかおるが時間経過を告げる。 えづく神崎が、一旦顔を上げた。 口を離しても性器を握る指はそのまま。ぬちぬちとカリ裏をこすり続ける。刺激された性器は勃起しているようだった。 「なんか、苦いの出てきてっけど?」 「……っくそが」 余裕のある煽りを入れてまた一気に根元までほおばった。 じゅぼじゅぼ派手に下品な音がなる。 口を窄めて、頭を振って、えづいて、 時には悩ましげな声を上げて。 じゅると一際大きな音を立てて神崎が吸い上げた時だった。 「……っくそ、すいま、せん東条さん……」 庄次が前かがみに両手で金髪をわし掴んで強引に神崎の口から性器を引き抜いた。 「んっ、あ」 「4分」 舌を出したままの神崎が庄次を見上げる。 ちゃりちゃり揺れる口ピアスのチェーンに唾液が伝った。 「てめっ、休んでんじゃねぇ、もうイきそうだったろーが」 神崎がぐぐっと顔を近づけ様にも庄次の力に適う訳もない。 諦めた神崎は手を伸ばし、手慣れた手つきでしごき始めた。 「バッキバキじゃねーか、もうイくだろこれ。早漏野朗」 「あと30秒」 かおるがそう告げたと同時。 神崎の顔面にねっとり濃い精液がぶちまけられた。 うわ、と目を瞑るも顔を背けられない神崎の顔面にドロッと精液が伝う。 「てめ、っ」 「くそっ、なんだよコイツ……すんません東条さん……」 「4分45秒か」 神崎を蹴り放してベッドでうな垂れる庄次が頭を抱えた。 神崎は顔射にも慣れた様子で、口を拭って起き上がるとベッドサイドのティッシュを何枚か乱雑に取って顔を拭う。 「じゃあオレ帰るから」 立ち上がる神崎を真ん中のベッドに投げ飛ばす。 かおるが、何を言わずとも神崎の両腕をひとまとめに枕に押し付けた。 「なっ、にすんだよ!」 「大丈夫、一周したら帰してやる」 「は……一周?」 「虎と、俺と庄次で一周」 「な、なんでだよ!約束が違う!」 「最後は手コキだったろうが」 「だって、それはあいつがフェラさせなかっ、んぐっ!」 かおるがタオルで乱雑に神崎の顔を拭った。 タオルの下で苦しそうにもがく神崎の抵抗が弱まったころ、そのタオルを神崎の口につめた。 ぐしゃぐしゃになった髪と、涙に濡れた目。 その目から一気にこぼれんばかりの涙が溢れて、すぐにポロポロ落ちだす。 「うっ、う、ううっ、んああ!」 首を振って、嫌だとしゃくりを上げて泣く。タオルのおかげで声が隣に漏れる事はない。さすがかおるは頭がいい。 「……東条さん」 気だるく顔をあげた庄次がバツが悪そうに神崎を見た。 「帰してやりません?フェアじゃない事したの俺だし」 その言葉に神崎が目を丸くして庄次を見た。 頭を掻きながら庄次は続ける。 「あとそこ俺のベッドなんで、神崎なんかに  汚されたくないですし、せっかくの修学旅行だし  今日は姫川んとこ帰してやってもいーんじゃ?」 「いいんだよ、神崎も気分乗ってきたろ?  それに修学旅行つったら夜の乱交だろ」 「いやいや聞いたことねーすよ、そんなの」 「まぁさっさとヤって帰してやればいーんだよ」 怯えながらも半勃ちになっている性器をかるく弄ってやれば、もっと触ってといわんばかりに足が自然と開いて艶声を漏らす。それでも、神崎は必死に首を振って解放を求めた。 「庄次、手押さえつけるの代わってくれ」 「お前もやる気なのか。なら民意に従いますけど」 「おう。かおる先するか?」 「そうする。虎の後じゃ神崎が持たないかもしれない」 神崎はもう抵抗をあきらめたようだった。 顔を背けて、声を殺して泣いている。 鼻をすすって、遠くを見る。 きっと姫川を思い出してやり過ごそうとしている。 それを容赦なく引き戻すのがかおるだ。 庄次と場所を代わると神崎のぶかぶかのシャツをまくって、ぷっくり勃った乳首に舌を這わす。 もう片方を指で押しつぶしながら、ジュウゥゥと音を立てて無い胸を吸った。 「んっ、ん、うう、んっ、!」 神崎の腰が浮いた。 一気に息があがり、視線がウロウロうろつく。 同時に、半勃ちの性器を強めに握ってピストンしてやると、あっという間に硬さを持った。 ぱくぱくヒクつく尿道から先走りが滲む。 「いくら姫川がうまくても同時にはしてくれねーだろ?」 「なんで姫川がうまいとかしってんすか?」 「神崎のセックス慣れした反応を見ていたら分かる」 「ああ。特に中がな、欲しがって絡み付いてくんだよ」 「中…っすか」 なんだかんだ、アナルもヒクついて挿入を待っている。 姫川に前準備されている都合のいい状態。 指を入れてみれば簡単につぷつぷ飲み込んでいく。 むしろ吸われていくといった表現のほうが正しいぐらいだ。 「んっ、ん~~~……ん、ん……」 もう一本。 それも余裕だった。 神崎のうねる腰が導くままに前立腺に指の腹を当てる。 「まずはイかせるか。もたなくなるか?」 「中イキならいいだろ、おさえとく」 「ンン──ッ!」 かおるが口を拭いながら、神崎の性器の根元を強く握る。 抗議に声をあげたが乳首を捻る事で黙らせる。 よっぽどかおるの方が神崎の言う怖いセックスをしていると思うんだが。庄次も同感のようで、 「地味にサドだよなぁ……」 そう漏らした。 「んっ、ふっ、んぅ」 「気持ちよさそうな声でてるな神崎?  ここつぶされるの気持ちいいんだろ?」 前立腺を指の腹でトントン叩きコリコリ擦って潰してやる。 途端、神崎の目が蕩けて喉から艶声が断続的に漏れた。 「ん、んんぅ、んっ、んっ、んんん!」 「なぁ、神崎?気持ちいいなぁ?  さっきまで姫川と気持ちいーセックスしてたんだから  敏感なんだよな?」 姫川の名前を出すだけで神崎の目がおよぐ。面白い。 それに、俺の指に自分の気持ちのいい所を押し付けて来る。 気持ちいいことには逆らえないように躾けられてるらしい。 かわいそうに。 「もっと強くか?お前の気持ちい所、潰して欲しい?」 訊けば嫌だと首を振るが、指を咥えたその場所はキュゥゥとすぼまった。期待に応えて前立腺を指の腹で強く擦って押して、こねて、ぐりぐり円をかいて神崎の身体が浮くほど弄ってやる。 「んっ、んぅうう!―ッんぅ!」 神崎が大きく目を開いて、喉から悲鳴を上げて、 大きく逆エビ反って腰をくねらせた。イったらしい。 ビクビク腹を凹ませて、俺の指から逃げようと腰を揺らす。 指を抜いてやると力無くベッドに沈んだ。 「ふーっ、う、んぅ、ふっ、うぅ」 荒い呼吸をした神崎は震える足を閉じて身体をそむける。 快楽を逃がそうとしているらしい。 指先がぴくぴく震えている。 「え、こいつまさかイったんすか?指マンだけで?」 呆気に取られた庄次が呟くと、神崎の肩がピクと跳ねた。 睨むなりなんなりの反応を返すかと思ったが、 余裕が無いんだろう、きゅっと目を瞑るだけだった。 「言ってやるな庄次。かわいそうなんだよ神崎も。  姫川にこんな身体にされて」 かおるが汗ではりつく神崎の前髪を後ろへ流しながら言う。 それから俺を見て、場所を代われと目で言って来た。 かおると場所を代わって、枕元に座る。 神崎が俺を見上げて、それから俺の股間に視線を下げた。 うん。次に何をすべきかよく分かってる。 「かおる、このタオルもう外していいよな」 「ああ。また騒いだら塞げばいい」 「わかった」 ベルトを緩めて、性器を神崎の目の前に出してやる。 それからタオルを引き抜くと、何を言うでもなく神崎は素直に舌を伸ばしてきた。 ぺろと亀頭を舐めて、それからパクッと口に含む。 「ん、ふっ……」 一方でかおるも準備が出来たようで。 自分のをシゴきながら、神崎の足を大きく広げる。 「あっ、陣野、待っ」 「何だ?」 「体勢、かえたい。フェラしづらい、し」 もぞもぞ体を動かして、自ら四つんばいになる。 それからまた黙ってフェラの続きに戻った。 ここまで従順なのは、さっさと終らせて帰りたいんだろう。 セックスに慣れきった神崎に庄次がドン引いてる様が視界に入った。 「神崎、挿れるぞ。虎の噛むなよ」 「ん、うん……あ、あ……」 かおるの性器が埋まっていくのが俺の位置から良く見える。 フェラが止まって、俺のを咥えたまま埋まっていくかおるに普段からは想像のつかない高い声が神崎から漏れる。 この声がいい。メス化しきった開発された声。 それが神崎から出るというのがまたいい。 「うわうわうわ……何気持ち悪い声出してんだよ」 「わかってねーなァ庄次。かわいー声じゃねえか」 「いや、神崎があんあん言うって寒いだけっすよ」 「……っ、うる、せぇ、しね、よ」 まだ庄次に悪態がつける余裕はあるらしい。 俺のを握ってかおるのを受け入れながらも、まだ強がる様はそれはそれでかわいい。 「!あ、はっ、ああぁ、あ、んぅ」 全部が入ったらしい。 かおるが全てを埋めたままグリグリと腰をゆるすと神崎からさらに高い声が漏れた。 慌てて声を抑えようと握ったままだった俺のに口を戻す。 たまにじゅるっと吸ってくれるものの、意識を欠いたフェラはそんな気持ちいいものでもない。 「あっ、ん、あっあ、あ~……あ、ああ」 かおるが揺さぶり始めると尚の事だった。 もう意識はセックスに持っていかれているようで、ただ俺のを半端に口に咥えたまま喘ぐだけ。 まぁそれはそれで声が響いてイイんだが。 でもだったら顔が見たい。 もういいと声をかけようとした時、神崎が俺を見た。 「ふぇ、ら……むずい、ごめ、……」 「ん。そうか」 「あっはァ、きも、ち、よくて、かんが、え、ら……んぅ」 素直に気持ちいいと声に出した。 本当にもう何も考えられないんだろう。 「お前は誰でもいいんだな」 かおるが言いながら一際深く突き上げると、 神崎が喉から悲鳴のような声をあげてカクと崩れ落ちる。 「いや、ちょっと声……。となり大丈夫っすかね……」 庄次がベッド側の壁を見て心配するほど声がでかい。 かおるも壁を見て隣の部屋を思案する。 隣は、都合がいい事に禅さんだ。 禅さんが部屋でじっとしているわけが無い。今頃はきっと飲みに行っているはず。 誰が言うでもない。言い出した庄次も気づいたようで、ため息をついて気だるげに視線を神崎に戻した。 「声、存分に出していいらしいぞ神崎」 言いながらかおるは神崎の崩れた身体を仰向けて神崎の腰の下に枕を置いた。丁度目の前にあるしで乳首を両方とも摘んですりつぶしてやる。 「あっ、やぁ、だめ、ど、っち、どっちかァ、あっ、ああ」 「なんで?すぐイくから?」 「そ、う、つか、れるから、やだ」 神崎の震える指が、俺の腕に絡んできた。 やめて欲しいと言う割には、無意識だろうか。 もっと弄ってと言わんばかりに自分の胸に押し付けてくる。 気付いたかおるも、小さく笑った。 リクエストに堪えて、乳首ごと胸の肉をジュゥと吸うと、 「あっ、ああ、あ、あ、い、やだぁ、ああ」 言葉とは裏腹にぎゅうと俺の頭を抱きしめてくれる。 勃起しきった乳首を舌先で転がして、潰しては吸い上げる。 「ひっ、ん、吸、うの、いだ、い、やさ、じ、ぐぅ」 「虎そのまま続けてくれ。すごい締めてくる、コイツ」 「や、だ、いだいの、やだ……やめ、で、やめ」 「仕方ないだろ、お前は痛くされると締めるんだから。  早く俺にイってほしいなら我慢しろ」 「う、うぅ……」 かおるに諭された神崎が声を飲んだ。 ぎゅうと俺の頭を抱いたまま。耳元で泣くのを我慢した声が漏れてくる。 ダメだ、もうバキバキに勃起してる。 一回なんて約束したけど、一回で足りるだろ?これ。 あー早くヤりてぇ。 「と、うじょ、ぉ」 「んー?」 「出ちゃ、う、かも、どい、てくれ」 それまで、俺をホールドしていた腕が髪を掴んでで来る。 離したくない。反射で乳首に歯を立ててしまえば──、 「ひっ、う、あああ、いだ、ああッ、ああ」 大げさにビクビク身体を震わせてた。それから耳に生暖かいものが掛かる。 「ちょ、お前……東条さんに何してんだコラ」 確かめる前にそれがなんだかは庄次の反応で分かる。 神崎が射精したのだ。 かおるになすがままに揺さぶられる神崎の焦点の合わない目が宙をさまよっている。胸が大きく上下に忙しなく動いていてイっている最中なのが可愛い。 「あ、ああ!あ、あ、ッあ、はっァ」 「やっぱりいいな、お前……中イキ出来て偉いぞ……」 そう呟いたかおるが神崎の腕を掴んで遠慮無くただただ突き上げ始める。 「っは、締、まる」 「あっんアっ、陣、のぉ、もお、やだぁ、きもぢ、いい」 「ならいい、だろ」 「あっ、はや、ぐ、イってぇ、きも、ちいの、つら……」 「わかったから 黙って、ろ!」 神崎に覆いかぶさって抱き潰して腰を振る。 神崎がかおるの胸の中で泣くように喘いで、喘ぐ。 「……!ひっ、ん」 「ん、神崎ッ」 神崎の体が大きく揺れて、喘ぐ事すら出来なくなった頃。 かおるの体が止まった。中出ししきったようだった。 息を荒げるかおるの下で、 先に余韻から醒めた神崎が目を泳がせて訊いた。 「なぁ……ゴム、してるよな……?」 「あ……?」 かおるを見て俺を見て、それから一応庄次も見た。 答えない俺とかおるの変わりに、庄次が気だるく答えた。 「してなきゃ何か文句でも?」 「いや、え、そうじゃなくて……」 「ああ……。なるほど。俺が中出ししたから、  虎がヤれないんじゃないかって言いたいのか」 「おーそういう事か」 「大丈夫だ、問題ない」 「あんだよ?これでやめてくれんの?」 スッキリした表情のかおるが髪をかき上げて神崎から退く。 「よかったぞ神崎。悪かったな、無理させて」 「え?あ、あぁ……。え、で何が問題ねーの?」 「腰あげろ」 「……何?」 「いいから」 ベッドから降りたかおるは床に落ちたタオルを神崎の尻の下に敷き、俺を見た。 「別にいいよな?虎」 「そーだな、ローション無いしむしろいーかもしれねーな」 「「は!?」」 神崎と庄次の声が重なった。 お前らなんだかんだ、気が合うと思うぞ。 「え、おい待て、姫川のだってそのままだったのに……?」 「虎は細かい事は気にしない。お前は黙って足開いてろ」 「……風呂、ここの使わせてくれんの?」 「逆にお前はそのまま部屋に戻るつもりだったのか?」 「ならいいけどよ……」 いいのかよ、背後で庄次の呟きが聞こえた。 「じゃあ俺はシャワー浴びてくる。楽しめよ虎」 「え、じゃあオレも一回入りた──、」 「お前はダメ」 身体を起こした神崎をベッドに押し付ける。 恨めしそうな目が俺をまっすぐ見て訊いた。 「なんでだよ」 「3人分の精液を注がれてるって感じがいい」 「……やっぱ変態かよ」 「4人分にしてやってもいいぞ、なあ庄次」 「あー、言うんじゃないかと思ってましたよ」 呆れて笑う庄次はナイナイと首と手を振った。 「気持ちいーのになぁ。神崎の中」 「……ッ、ん、」 指を中に入れると一番に精液の塊があった。 これを塗りたくるように動かしてやると神崎の眉間のしわが寄る。 「東、条……いて、ぇからそれ、やめて、くんねぇ」 「じゃあここ?」 「……っあ!?ッ」 イイ所を指の腹で擦ると、キツく目を閉じて唇を噛む。 腰が揺れて足がシーツを掴んだ。 腕に力を入れて揺さぶると大きくのけぞる。チェーンが首に張り付いる。どかしてやろうと舌で絡めれば──、 「あっ、あ、ああッ!」 大きく色に鳴いた。 そのあまりの声の高さと大きさに、肩をビクつかせる庄次が視界の端にあった。俺の腕にしがみつく神崎が上目で言う。 「ゆ、び……も、だめっ、イ、イく、から……」 呼気を荒げて可愛いばかりだ。 応じない俺に神崎が性器に手を伸ばしてくる。 「はやく、これ、挿れろ、や……ボケ」 「挿れて欲しいか?」 「……死ねよ」 「じゃあもう少し指で」 「えっ、だ、だめ……。その……挿れ、てくれ」 可愛い。 悔しそうに唇を噛んで、俺を見てそれから目を逸らす。 キスして欲しいのかと思って顔を近づけたら頭突きが来た。 「東条さんに何かましてんだコラ」 痛くも何ともない。 むしろ神崎の方が痛がってはいたのだが、庄次が立ち上がって神崎の頬をはたいた。 「立場わきまえろ。黙って足開いてろや」 「おい、庄次カワイソーだろ。オンナを叩くな」 「………」 神崎は頬を赤く腫らしただけで何も言わない。 黙って、庄次が言う通りに足を開いて俺を見た。 なんだかなぁ。盛り下がるな。まぁいーんだが。 指を抜いて先っぽを当てがう。 当てがっただけなのに、ヌプッと簡単に亀頭まで入ってしまったのは3回目だからだろうか。 神崎も想定外だったのだろう。 小さく声を漏らして、体を震わせた。 「あっ……ぅン」 先っぽだけ咥えている様がエロい。視覚にくる。 根元を持ってグリグリ動かすと、咥えた狭い輪がグニグニ形を変えてこれまた視覚にくる。 「東、じょ……や、だそれ」 庄次を警戒してか、腕で顔を覆った神崎が足を震わせて言った。返事代わりに今度は反対に円を描くと派手にヌチャヌチャ音が鳴って、余計神崎が顔を隠してしまう。 「お前、嫌嫌言いながら東条さんの期待してんじゃん」 音に釣られて繋がった部分を覗いた庄次が笑う。 そう、神崎の穴が俺を期待してクパクパしている。 今日だけで2人も喜ばせた穴が3人目に期待している。 「うう……も、そこいるのやめ、早く挿れ、ろよぉ」 涙声にせっつかれて仕方なく腰を進める。 あったかい、それから、すぐにキツイ締め付けが来る。 肉ヒダが奥へ奥へと誘い込んでくれる。 誘われるままに奥へ進んで、もう肉がやめてと言い出した所で神崎の腰を掴んで強引に突く。 「ああああ、あっ、ぐ、く、るし、おな、かぁ」 神崎が目を丸めて仰け反る。 指が俺の腕に食い込んでいる。構わず、根元まで進めてもう入らなくなった所で止める。 神崎を見下ろすと、早い呼吸で涙と涎をだらだら垂らして、空ろな視線を天井に向けていた。 「うっ、う……つら、い……姫、かわぁ、ひめか、わぁ」 ああ、これこれ。 コイツ、こーやって姫川を想ってやり過ごそうとする。 それがなんとも征服欲が働いて下半身にクるんだよなぁ。 それが伝わったらしく、深い部分に収まった性器が脈打つ様に神崎が怯えて俺を見る。 可哀想だ。性器も小さくなって萎えてしまっている。 チラッと庄次に視線を送る。 何を言わずとも伝わったようで、最初は首を振ったが、視線を送り続けるとため息をついて神崎の性器を握った。 「え、や……なに、す」 「えーと東条さん。どーすれば?俺やり方知らねーす」 「ん?自分でやる時と同じようにやればいーぞ」 「や、め……おれ、もう勃たな、いから、さ、わんなぁ」 「でもキモチいー事はいーんだろ、  ホラさっさと喘いで東条さん接待しろ」 手加減の無い庄次の手コキ。すぐに先走りが溢れてきた。 中もぎゅうぎゅう締め付けてくる。 「んっ、あ、あっああ、と、とうじょ、早く、う」 神崎から腰を回し始めた。 庄次の手コキから逃げようとしているだけかもしれないが、 うん、エロい。 ぷっくり勃った乳首、視線を送ると察した庄次が弄りだす。 「んんッ、イく、イきそ、は、早くくうご、いてぇ」 でもなぁ、じっとしているのもキモチいーんだよな。 中が小刻みに震えてて、肉ヒダがごりごり竿を擦って。 ほんの少しだけ、腰を揺すってやると──、 「あっ、あああ、きも、ち……い」 そう喘いでくれる。 なるほどな、焦らす方が感じるんだな。 「うっ、あ、も……イ、イく!離し、て」 ギュウゥゥ、キツい締め付けがあった。 神崎の腰が宙に浮いて、ぎゅっとシーツを握って、 顔を真っ赤にして、大きく息を吐く。 でも射精はしない。庄次が首をかしげて手の平を見る。 「何それ演技?笑える。黙って気持ちよくなってろ」 「だ、だめ、ちが、ちがう!手ぇやめ、ろっ!」 イったばかりでさっきよりも激しく動かされる手コキに神崎が涙声で静止を求めた。 「やめ、やだ、やめ゛っ……!アッ、うぅぅッ」 かわいそうに、中イキしたのは本当なのにな、神崎。 男が中イキするとは思わない庄次はさっきより刺激を上げ、乳首も捻る。 「あああ!、あ゛あ、っも、もれちゃ、ああ゛」 「やっぱイってねーんじゃん。さっさと射精しとけ」 俺を咥えたまま腰がジタジタ動く。 俺の腕を掴んでいた手は、庄次の手を退かせようと必死だ。 足がばたついてそれがまた刺激になる。 ポロポロ神崎から涙があふれた。 「ほん、と、に、やめ゛、てぇえ゛」 「あー庄次、そろそろ止めねーと」 あーうん、遅かった。 ブシャッと庄次の手の中に神崎が潮を噴いた。 思いっきり顔にかかって、サングラスから雫が垂れる。 「ッあ、ご、ごめん、なさ、でも、おれわ、るくな……」 放心しながらも、うわ言が謝り続ける。 庄次を見れば手の平を神崎の胸になすりつけ、それから神崎のアゴを掴み上げた。 「おいおい、顔殴ると姫川がうるせーぞ」 「ゆ、るひ、へく」 神崎の声が止まった。 首でも絞めてるのかと覗き込めば、庄次が喰らいつくように神崎の口を塞いでいた。あーそれ神崎嫌がるやつだぞ。 けど抵抗する力もないんだろう。 ぢゅぱ、ちゅぱっと水音が長い。 神崎は首を逸らす事でしか抵抗が出来ないようで、援護に腰を振るとそれすら止まった。 しばらくして庄次が顔を上げると神崎の頬を掴んだまま唾液を落とす。 「飲み込め」 頬を平手で打って、喉仏が上下するのを確認するとアゴから目元まで舐めずって解放した。 寸間、神崎からポロポロ涙が零れてきた。声を殺して泣く。 その振動が刺激になって良い。 神崎を揺さぶるスピードを上げながら庄次に訊いた。 「神崎の事嫌いじゃなかったのか?」 「ションベン掛けられたんすよ?  コイツのプライドへし折る事してぇじゃないっすか。  嫌いな奴のディープキスって相当嫌っしょ」 「お前はいーのかよ」 「あー俺別に誰とでも出来るんで」 俺になすがままに揺さぶられながら、放心している神崎は涙を流すだけで反応が面白くない。 いや、締め付けられてはいるから気持ちはいいのだが、いつも通り嫌がったり怖がったりしてくれてこそ価値があるというのに。よっぽど庄次のキスが嫌だったんだろうな。 仕方ない、もっと追い討ちを掛けてやろう。 「あ、う……」 神崎の腕を引いて、体を起こさせる。 クタッと力なく俺にしなだれかかってそのまま動かない。 都合いい。 「じっとしてろよ」 神崎の膝裏を抱えて、立ち上がる。 驚いた神崎が反射的に背中に腕を回してきた。 「すげー東条さん、駅弁とかした事ねーすよ俺」 「うぅっ……お、ろし、て……」 「こっちの壁、聖の会長様の部屋だからな?声落とせよ」 ベッドとは逆の壁。 神崎の背を壁に押し付けて腰を打ち付ける。 「あ、ぐ、深、い…ッ!」 うん、いい。 気持ちイイ角度が調整出来る。 神崎も落ちないように抱きついて来て、ナカも締まる。 「庄次、動画回せ。俺が映んねーように」 「了解っす」 「え、な、やだ」 ほどなくして背後から録画開始の音が聞こえた。 パチュパチュ音をさせて、リズミカルに揺すってやる。 気持ちいい。宙にいる事で神崎の動きが一切封じられる。 俺が気持ち良いように動ける。 「はっ、あっ、ああ!あ、ッああ、あ、」 突き上げる度に、神崎が喘いで跳ねる。 首が据わらなくなって俺にしがみつく力も無くなった。 仕方ない。ベッドに投げ飛ばして、四つん這いにさせてバックから滅茶苦茶に突く。 「あ~゛あ、あああああ、ゆ、っぐり、い、苦、しいい」 爪がシーツを引っかいた。 顔をシーツに埋めて泣く神崎を庄次は許さず、金髪を掴んでスマホを向けた。 「顔見せろ顔~」 「う、い、や……やめ、てく、れ……!」 「うっわAV女優みてーなツラしんぞ、お前」 「し、てな……いッ!」 「気持ちいいんだよなぁー神崎」 「うう、あ、あ、あ、あああっ」 精子が上がってくる。もっと楽しみたいが、時間も時間だ。終らせてやらないと。 神崎が嫌がる正常位。一度引き抜いて体を仰向けに返す。 「はっ、はぁ……あ!あ……おわ、終った……?」 顔がビチョビチョだ。 顔全体がもう真っ赤で、目は焦点が合わず鼻水も出ている。 何も言わず、また奥を貫けば仰け反って声を漏らした。 「あああ、あ!あああ」 「手加減無しでヤるからなーがんばれよー」 きっとこれが神崎の言う怖いヤり方って奴なんだろう。 ギリギリまで引き抜いて、奥を目指して一気に突き入れる。 竿が一気に擦られて気持ちいい。 「ひっ、あ、あああ、ううう、や、やだ、やだああ」 それを繰り返して、どんどんスピードを上げて。 逃げる神崎の腰を持って、がむしゃらに打ち付ける。 ギッギッとうるさいベッドの音に負けず、パチュパチュ繋がった所がエロい音が派手に鳴らす。 「あっ、あ、あ、ああ!あッや、さ、しぐぅ」 神崎を見ると失神しかかっている。 涎がシーツに染みを作ってまた小便を漏らしている。 「ひ、いっああああ!あ、ぅん」 もう死に掛けているならいいか。 一切の手加減なく、壊す勢いで腰を振った。 気持ちいい。 気持ちいい。 神崎の狭い穴。 狭い輪。 何度も何度も擦って、擦って、擦って、擦り付けて。 「うっ、うぅ゛ひめ、がわぁぁ、たすけ、てぇ、え」 可哀想に。 顔を真っ赤にしてボロボロ泣く神崎が腰にくる。 ああ、イけそうだ。 神崎の性器を無茶苦茶に擦ると、奥がうごめいた。 イったらしい。 ぎゅうううと締め付けがあって気持ちいい。 思い切り突き上げる。 神崎の腰が持ち上がって、そのままの体制で射精した。 ビュクビュク脈打つのが判る。 最後の一滴まで突き上げながら射精する。 「っはぁ、気持ち、いい……」 「東条さん、やべーっすよ」 「なにが……」 神崎の隣に寝転んでスマホを構えたままの庄次を見る。 「神崎、途中で失神しました」 「ほう」 「動画も撮れてますよ」 「ん、お前がいてよかった」 隣の神崎を見ると、確かに眠っているのとは違う。 意識のない神崎がそこにいた。 鼻水と涙を手で拭ってやっても起きる気配はない。 段々熱も落ちてきて、周りの音が聞こえてくる。 ドライヤーの音。丁度よく風呂は開いたようだな。 余韻が冷めたら行くか。 「俺、セックスで失神するヤツ初めて見ましたよ」 「さすがに旅先で一日に3人は辛かったのかもなぁ」 「でしょーねぇ。で、この動画どうすればいーすか?」 「俺とかおるに送ってくれ。これで脅してまたヤれる」 「ああ、姫川に知られたくなければーって奴っすか」 「いや姫川は知ってるんだけどな」 「は?」 体を起こして枕元のティッシュを取る。 神崎の足を開いて、流れ落ちる精液を拭いてやりつつ、それってどういう?と首をかしげる庄次に続きを話した。 「放し飼いなんだよ、姫川のヤツ」 「とゆーと?」 「神崎が他でヤられてくると、  申し訳無さでより自分に固執してくるのがいいんだと」 「あー……うーんまぁ姫川らしいのか……?」 「だからお前もその動画ありゃ神崎に相手して貰えるだろ」 「いやいやいや、いーっす。ガチで」 「でもちょっとは今日スイッチ入ったろ」 「百歩譲って、こいつが姫川のモンじゃなければいーすけど  なんか失神したのとか見てると萎えのが強いすね」 「お前、優しーんだな」 「いやいや、哀れみっすよ」 庄次が笑った所で俺の携帯が鳴った。 「動画送りましたんで」 「助かる」 テレビの前のテーブルに上に置いた携帯。 それを取りに行きがてら、テレビを付ける。 賑やかなバラエティ番組の笑い声が部屋に広がった。 深夜の人気番組だ。もうそんな時間か。 『あーーーッ、あ゛ッ、あああ、やだぁ、あ、ああ』 「ちょ、東条さん。神崎の声、テレビに勝ってますよ」 「はは、すっげー声だな」 「演技じゃねーんすもんね、その声」 「なあ。女でもここまで出さないぞ」 「声抑えるらんねーぐらいって事っすねさすが東条さん」 「俺でこれなら姫川相手だとスゲーんだろうな」 羨ましい。姫川にヤられてる神崎を見たい。 動画を見返せばまた半勃起してしまう。 神崎を振り返るとまだ足を開いた格好で失神したままだ。 ムラついてくる。もう一回ぐらい遊ぶか。そう思ってベッドに戻った時──。 「おい、庄次。なんだこれ」 かおるが携帯片手に風呂場から出てきた。 すっかり部屋着で、もうこの後は寝るだけといった感じだ。 俺を見て、神崎を見て、居つく場所を探してテレビ前の椅子に座った。 「あー東条さんが撮れつったから」 「いい考えだろかおる。この動画あればいつでもできるぞ」 「そうだな。ん……神崎は寝たのか?」 「東条さんが失神させた」 「虎、やりすぎだ」 「はは、すまん」 「で、庄次はヤるのか?」 「いやいや無理。無い」 「でもお前すっげえディープキスしてたじゃねーか」 「いやそれは嫌がらせだから意味なんかねーっすよ」 「まあ動画あればいつでも出来るしな」 「じゃあ時間も時間だから叩き起こして部屋に戻すぞ」 神崎の前に立ったかおるを、庄次が制止した。 「まあここ俺のベッドだし別にいーよ。  もう少し休ませてやりゃいーんじゃね」 「なんだ、どうした?珍しい」 「いや、東条さん風呂入ってきて下さいよ。  その間に俺だけで神崎捨ててくるんで」 「ん?おう、捨てるってどこにだ?」 「あー姫川の部屋でいっすよね?  こいつの元の部屋、チビがいたはずっすから」 「ハハッ、確かに教育的によくないな。じゃあ任せる」 「いや待て」 「ん?」 かおるが神崎の肩を揺さぶりながら庄次を見た。 「こんな状態で姫川の所に捨てたら動画の効果無くなるぞ」  神崎が姫川にバレてないって思ってないとだからな。  だからまずは起こして、自分で風呂入らせて、  自分の足で部屋帰らせないとな」 「うーん……そんな体力あんのかコイツ?」 「まあ、かおるの言う通りとりあえず起こすかァ」 軽く揺さぶっても起きる気配は無い。 頬を叩こうと手を上げた矢先、庄次に止められた。 「風呂、このまま東条さんが入れてやるとかはどうすか?  意識ないなら洗いやすいし、  その内起きるんじゃないっすかね。俺も手伝いますし」 「うん?それでもいーが」 それまで静観していたかおるが小さく笑う。 「お前、やけに神崎に優しいな。惚れたんじゃないか?」 「寒い事言うな」 「まあ、こうなるだろうと思って風呂、湯溜めてあるから」 「おお、さすがかおる。じゃあ庄次手伝ってくれるか?」 「へいへーい」 俺が担ぐつもりだったが、何を言うでもなく庄次が神崎を抱き上げた。それも姫抱きで。 庄次は否定したが確かに扱いがいい。 さっきまであんなに悪態をついていたとは思えない。 風呂のドアを開けて、庄次を先に通す。 溜まった湯船にゆっくり神崎を下して沈まないように頭を持ってやる辺り、庄次も神崎にハマりかけている気がする。 「どうだ起きそうか?」 「さあ、起こしてはみます。東条さんシャワーいっすよ」 「悪いな」 「うぃーす」 風呂とは別のシャワー室に入る。 透明で仕切られたそこは、二人の様子がよく見えるが、声は聞こえない。 とりあえず、頭を洗う。 大浴場のほうに行ってもよかったが、神崎が起きたならまたヤりたい。二人はもう帰すつもりだが、なんだかんだ庄次もかおるも俺のしたい事を止めはしない。 体を洗い終える頃、神崎が起きているのが見えた。 タオルを巻いて浴室に戻る。 「起きたのか」 「あー東条さん。今さっき」 神崎が俺を見上げて、せめてもの防御か肩まで湯に浸かる。 「今、……何時?」 「23時半ぐれぇかな」 「そっか」 神崎は表情を和らげて、ホッと息を吐いた。 まだゆっくり寝られる時間だ。自分の部屋にだって戻れる。 そういえばこの二人で喧嘩が起こらなかったのも珍しい。 起きてから何か話したのか、喧嘩腰な態度は消えていた。 「お前のベッド、汚して悪かったな」 「まあ別に……ていうかお前が謝る道理はねえと思うけど」 「……そりゃな。てか風呂って帰るからお前ら出てけ」 「いいよ、洗ってやる。なあそう言ってたよな庄次」 「いや、あれは失神してたからで」 「まぁいいじゃねえか」 腰に巻いたタオルを庄次の頭に被せて湯船に浸かる。 ザバッと湯が溢れて、庄次が飛びのいた。 「いやいや、東条さんアンタが入らなくても」 「こっちのが洗いやすいよなぁ、神崎」 「……オレ、ひ、とりで洗えるから」 「あ?」 「う……」 凄めば体を縮こまらせる。いつもは終った後すぐ平素の態度に戻るのに今日は怯えたままだ。 よほど失神するまでに怖い思いをしたんだろう。 来い、と腕を引いて寄せると抵抗無く腕の中に納まった。 太ももに手を這わせて、乳首は摘んで引っ張ってこね潰す。 「あっ、やだ、も、う頼む……ほんと、に……」 暴れだした神崎でパチャパチャお湯が跳ねる。 水滴が庄次に掛かると神崎がビクッと肩を震わせた。 庄次は無表情で水気を払いシャワーを取った。 「はいはい、東条さん。さっさと洗って寝ますよ」 「えー」 「アンタ、いつもは10時には寝てる人でしょ。  明日せっかくの自由行動なのに起きれなくなりますよ」 律儀に自分の手で温度を確かめてから神崎に向ける。 肩に当てて、熱くないか?なんて訊く始末だ。 今までの庄次なら顔に直でぶっ掛けててもおかしくない。 「んっ」 「え?」 「あ?」 神崎が喘いだ。 いや、俺は何もしてない。庄次の視線に慌てて首を振る。 じゃあ何かと思えば、シャワーの水圧だ。 確かに神崎は首元が弱い。ここを舐めると大人しくなる。 が、いくらなんでも敏感になりすぎだろう。 じゃあもしかして。 穴に指を挿れると、大きく体をビクつかせて喘いだ。 「あっ、あああ、ああ!」 そのまま中をかき回すと、あっという間にイったらしい。 激しく息を吐いて涙を湯船に落とした。それから震える手で俺の胸を押して距離を取る。自分で自分を抱きしめて、絶頂の余韻を逃がしながら息も絶え絶えに言った。 「やく、そく、まもって」 「なんだっけ」 「1回だけ、っての……」 「今の所守ってるだろ。俺は中出し処理しただけだぞ?  お前が勝手にイったんだろ今のは」 「……っで、も、」 反論できないまま、うう、と声を上げて泣いてしまう。 風呂場にかかったエコーがより悲痛さを増す。 可哀想になぁ、力で抵抗できないっていうのも。 「あの東条さん……さすがにカワイソーじゃないっすかね」 「あん?」 「いや、明日もあるし、修学旅行りてーつってるなら、  足腰立たなくさせてもっつーか。てか俺もう寝たいっす」 グスグス泣く神崎が庄次を濡れた目で力無く見る。 「ほらコイツ、姫川と寝てーとか言ってたじゃないっすか。  多分姫川の部屋戻る約束とかあんじゃねーかな。 な、おい。そーだろ?」 「……うん、姫川と、いたい……」 ズズッと鼻をすする神崎が俺をじっとみた。 力無く懇願して哀願の目で。普段の死んだ目はどこへやら。 「それにさすがに早乙女も帰ってくる頃っすよ」 「あー禅さんに見つかるのはまずいなぁ」 「でしょ」 「仕方ない今日の所はお開きか」 「神崎、お前起きたなら自分で風呂は入れるな?」 「……うん」 「ほらほら、じゃあ東条さん行きますよ」 「髪乾かしてねーんだけど」 「アンタいつも自然乾燥でしょーが」 庄次に押しやられて部屋に戻る。 かおるはベッドに収まって本を読んでいた。 沖縄まできて本とはかおるらしい。 「ん、神崎は」 「風呂。起きたから入らせてる」 「そーか、ところでどうする庄次。  お前のベッド寝られる状態じゃないだろ。  俺なら別に一緒に寝てやってもいいぞ」 「待て待て、庄次は俺の所で寝ろ。俺が真ん中使う」 「いや東条さんをそんな所で寝かす訳にはいかねーっすよ。 だって神崎、小便漏らしてんすよ」 「いい、神崎抱いて寝る」 「ん?」 「えぇ?いや、神崎帰すってさっき言ってましたよね?」 「もっかい失神させりゃここで寝かせられるだろ」 「えーじゃあ俺、マジに東条さんのベッド使いますよ?」 「おお、そうしろそうしろ」 庄次がため息をついて、着替えてベッドに入る。 もう神崎を庇う事は諦めたようだ。 「明日飯7時なんすから、起きて下さいよー」 「わかったわかった」 「起こすの怖いなぁ、もう……」 「大丈夫だ、庄次。俺が起こすから安心しろ」 「いやいや、お前も寝起き機嫌相当悪いからな?  ったく世話の焼ける」 「ハハッ、大変だな庄次」 「笑い事じゃねーっすよ、ったく」 庄次がベッドに付いたアラームをセットし、部屋のライトを最小にした頃、神崎が戻ってきた。 「暗……。オレの服どこだよ」 「さあ?虎に聞いたらどうだ」 「その辺に落ちてるだろ」 「………」 風呂場の壁に手を突いたまま神崎は動こうとしない。 力が入らないんだろう。支え無しだと立てないのだ。 思わず口角が上がってしまう。気づいた神崎がハッとして首を振ったがもう遅い。腕を引いて、ベッドに押し戻す。慌てた神崎が俺の下で暴れた。 「やめ、ろ……疲れ、て止まってた、だけ」 顔を青くしている神崎の喉に舌を這わせる。 大きく仰け反って嫌だ!と声を上げて暴れた。 構わずそのまま乳首を吸い穴に指を這わせる。 「やっ、だ、もう嫌だって!殺すぞ!」 「そんじゃ東条さん、程ほどにして下さいよ」 「朝起きろよ虎」 「おい陣野!テメ、なん、とかしろよぉ」 「ほら、庄次とかおるはもう寝るらしいぞ?声殺せ、神崎」 「うっ、や、だもう、頼む、って……」 「いいじゃねーか、また失神させてやるからここで寝ろ」 「や、だ、やだ……姫川ぁ、助、けてぇ……!」 思いっきり腰に来た。なんて可哀想なんだ。 もう声をあげて泣いて必死に足を閉じる。無駄な抵抗だ。 力任せに脚を広げさせる。それなりに力を使った。神崎の全力だったんだろう。力の差を誇示してやると、神崎から力が抜ける。 「お前が俺に勝てる訳無いだろ」 「うっ、うぅっこ、わい、姫、川ぁ、ひめっ、か」 無駄に後ずさるものだから腕を掴んでベッドに縫いつけた。 それからどこを触ろうとも、じたばた暴れて姫川姫川泣く。 鼻水やら涙やらで顔がグシャグシャだ。面倒だな。さっさと挿れて落とすか。 「怪我するぞ、大人しくしてろ」 「も、やだぁ、つら、い、無理、ぃ」 泣き続ける神崎の穴を拡げて、亀頭を当てる。 何度目かわからない「姫川」と名前を呟いた時だった。 「あー……うるせぇな」 頭から布団を被っていた庄次が起きてきて神崎の隣に立つ。 俺をキレたのかと思ったが、振りかぶった拳は神崎の顔面を殴った。モロに食らった神崎が枕に沈み鼻血が枕に滲む。 「あー悪い庄次……怒ったか?」 「いや別にいーんすよ、ただ姫川姫川うざくねーすか?  あいつが来た所でどーにもならねーっしょ」 「そうだが。あ、そうだ。お前姫川の部屋行かないか?」 「俺が姫川の部屋に間借りするって事すか?」 「いや、姫川こっち呼んできてお前ら姫川の部屋使えば」 「えーと?東条さんは残るんすか?」 「あと1回神崎で遊んだら俺も移動する」 神崎はと言うと反応が無い。 脳震盪でも起こしてしまったんだろうか。 枕に顔をうずめたまま微動だにしない。 「おいコラ神崎、テメーで姫川呼べや」 「おーい神崎」 今度はソフトめに神崎の頬をペチペチ叩く。 目をしばたかせた神崎が鼻血もそのままに庄次を見た。 「う、……え、何」 「姫川ここに呼べつってんだよ」 「え、なん……む、り……こん、なの見られたら終る……」 まぁ姫川は知ってるんだけどな。 「どうした庄次、虎。何の話だ」 「姫川と俺らの部屋交換するって話」   かおるも起きて話に混ざる。 「いいんじゃないか。  神崎お前、姫川の部屋まで帰る体力無いだろ。  ここにきて貰って一緒に寝たらどーだ」 「オレがお前らの部屋にいるの不自然すぎるし……」 「酔いつぶれたとかなんとか適当言えばいーだろ」 「嘘は姫川に通じねーもん……」 まあそうだろうな。 だが、もうごちゃごちゃ面倒くさい。 「かおる、姫川の番号知ってたよな?」 「ああ」 「え、なんで……待って、じゃあオレが電話す──、」 「あーいいから。お前はヤらせとけ」 神崎の頭を枕に押し付けて尻を拡げる。 うめく神崎に当てがって腰を進めるともう簡単に入った。 「ああ!あっ、も!ヤ、だぁ、うあっあ、うう……」 「この1回乗りきりゃ姫川に会わせてやるって」 「っふ、うう……はやく、終わ、って」 言うと、自ら足を開いて動きやすくしてくれる。 神崎は気にせず、俺が気持ちいいように動く。 4回目だというのに、まだ締め付けがいい。 がむしゃらに腰を振る。ベッドがうるさい程鳴った。 「神崎、電話かけるぞ。静かにしてろ」 「いいッ、終わったら、オレが電話す……」 「あー姫川?起きてたか?」 かおるが話し始めると、神崎が腕を噛んで声を殺す。 必死だ。可愛い。 ふと、庄次を見れば哀れみに神崎を見下ろしていた。 深く一突きすると声を喉で殺してさらに腕を強く噛む。 「ふぐ、んんんっ」 「あーあー……そんな噛み跡付けたらどの道バレんだろ」 庄次が神崎の腕をはがして自分の手で神崎の口を塞ぐ。 血が滲む神崎の腕をペロと舐める庄次に笑ってしまう。 ああ、これ次は3人で出来そうだな。 腕を舐められる事にも感じる神崎が身体を跳ねさせる。その身体を押さえつけて揺さぶる。気持ちいい。 「あー神崎?──は、えーっと酔いつぶれてるから  電話には出れないと思うが」 「どうしたかおる?」 「姫川が状況把握したいからとりあえず神崎出せって」 「だって、出るか?」 訊くと嫌だと首を振る。でも出させたいよな。こういう時。 かおるから電話を貰う。 耳元に電話をあてがっても尚、口を噤む神崎がいじらしい。 ユルユル腰を突くと大きく首を振って制止を求めた。 それから咳払いをして電話を受け取る。 「ひめ、かわ、うん……オレ」 「そ、う……オレも、立てな、いから、ここ、で寝る」 「あっ、う、だか、らあとで説明す、から、来て」 「あやま、ります、いっぱ、いあやまる、おねが」 「うん、オレが悪い、きて、むかえき、て、くださ」 なにやら揉めてるようだ。姫川相手にも泣いている。 大事にされてると思ったんだが、そうでもないのか? そんな神崎に我慢出来なくなって滅茶苦茶に腰を振る。 神崎が大きく目を見開いて枕を噛んだ。それでも嬌声の全ては枕に吸収されない。 電話口にも漏れただろう。震える手から携帯が落ちた。 かおるが拾い上げて会話に戻ってそれからしばらくして電話を切る。 「これから来るって」 「で?部屋交換は?」 「いいって。虎、もう終らせろ」 「ああ、わかった」 実の所、もうイけそうなんだがギリギリまで楽しみたい。 神崎の体を起こして、騎乗位に持っていく。 ポタッと水滴が落ちて来たと思ったら鼻血がまだ止まっていない。枕を振り返れば鮮血は広範囲に散っている。こんなの姫川なら絶対気づくだろうな。 「おわり……?」 クラクラした神崎の目が虚ろに俺を見た。 「腰振るの疲れた。お前動いて」 「え……」 戸惑う神崎にイライラした庄次が言う。 「姫川来るまでに終らせねーとまずいんだろーが」 「でも、も……、ほんとに、うご、けな」 動こうと試みはする。 ユラユラ腰を回して自分のイイ所には当てられる。 それで締め付けてくるのはいいのだが、これだと俺が気持ちよくない。俺にしなだれかかる神崎の吐息が耳に掛かる。 「ひ、どくしていい、からイって、と、うじょ」 「いいのか?手加減無くいくぞ」 「………う、うん」 ぎゅっとしがみついてくる。 こいつ、ほんとに。天然が過ぎる。 神崎の尻を掴んで思い切り腰を叩き付けた。 パンッとハッキリ部屋に響いた。 「あ、あああ~……あっ゛あ!!」 俺の腹筋で神崎の性器が擦れるらしい。 意図しない刺激にも、神崎が鳴く。 神崎の尻を掴んで俺に叩きつける。これが最高に気持ちいい。耳元で声にならない声がどんどん速さを増していく。 「あ、あっ!い、イぐう、い!ぐっ、だめぇ」 俺を抱きしめる神崎の背中がビクビク跳ねた。 あっけなくイったようだ。 ナカがドクドク痙攣して収縮を始める。 そこを掻き分けて突き入れる。イけそうだ。 「あっ、う、や、やっぱ、やめ、ひど、いのやめ、て」 「もう遅い」 「じゃ、あ、もっ、どやさ、じく、しでぇ」 「いやどっちも同じだろ」 一度引き抜いて、神崎をうつ伏せにベッドに投げ飛ばす。 イッたばかりで息も絶え絶えの神崎の肩を掴み、バックから一突きした。 「ぐ、ぅッ、ぐるし、いぃ」 それから何度も。 大きく引き抜いては深く入れる。 バチュバチュッヌチヌチヌチッグチュッ──! ローションも無いのに音がすごい。 姫川とかおると俺の精液がそうさせてる。 「あああ、壊れ、ああ、あっ!し、ぬ、や、だ、ああ」 神崎が泣き叫んでシーツをむしりかく。 構わず、登って来た射精感に従って神崎を壊す勢いで突き続けるとまたナカが痙攣した。 「ッああ!いぐ、いっ、イ゛ッだぁ、ア」 すごいな、中イキってのは。 イったそばからまたイけるらしい。 短時間に何回もイけばそりゃ死にそうにもなる。 「ひっぐ、も、やだぁ、うあ、ぁぁ!」 「はっ、イけ そ……」 「はやぐ、はやぐイッでぇ!も、むりぃ!うぇ、ええ……」 搾り取るような神崎の肉ヒダにいざなわれるまま。 奥深くに射精した。凄い勢いで出た。 ダメだ、気持ち良すぎる。 2回目だというのに、長く出る。 「はっ、あ……最高、だ神崎」 「……うあ、うう、ひめ、がわぁ、」 泣きながら姫川を呼ぶ神崎に覆い被さってホールドする。 ダクダク出続ける射精を受け止めさせる背徳感と高揚感。 可愛い。体がビクビク痙攣を続けている。 「ふっ、うう……ひめ、ひめか、わ、こわ、い、よぉ」 ひっくり返すと、鼻血と涙が混ざって顔は無茶苦茶だった。 うつろな目は今にも失神しそうだが、姫川が来るというだけでなんとか保っているようだ。 「東条さん、服、服」 「えーシャワーは」 「何いってんすか、もう姫川来ますよ。  姫川の部屋で浴びたらいーじゃないすか」 「庄次、こっち。神崎の服を投げてくれ」 余韻も楽しむ間もなく、二人に急かされて袖を通す。 神崎もグッタリしたまま、かおるに服を着させられている。 触られるだけでも、ビクビク反応してしまうようで、かなり雑に着させられたようだった。 神崎の手と足がまだ震えている。 かおるに背中をさすられてもまだ身体も縮こまっていた。 ベルトを締めた所で丁度部屋のインターホンが鳴った。  「俺が出る。虎、あんまり喋るなよ」 神崎を振り返ると、ベッドに体を横たわらせて青い顔でグスグス鼻を啜って泣いている。 さらにはこのベッドの惨状。何があったかは一目瞭然だ。 庄次がやれやれと、自分がさっきまで寝ていたベッドに神崎を抱きかかえて寝かせ、ティッシュで乱雑に神崎の顔を拭う。ぐしゃぐしゃになったベッドは布団で隠した。 二人とも気が利いて助かる。 「あー何、神崎が死んだって?」 かおるに連れられて姫川が気だるそうに現れた。 神崎を見つけるとベッドに座り、神崎の頭を撫でた。 神崎の表情が途端に柔和になって力なく笑む。 ああ、いいな……。可愛い。 姫川の前だけで出す表情なんだろうな、羨ましい。 「姫、川……ごめ、ん」 「あーうん。いーよ沖縄だしな。ハメも外したくなんだろ」 そう笑う姫川の目はまっすぐ俺を見ていた。 うん、まあバレるよな。 「で、どれだけ飲ませたの?」 「飲ませた?」 「あー虎、酒だよな、酒」 「ん、あーそっか。さあ。たくさんかな」 「あんま無茶させねーでくんね?この子弱いから。頭が」 なあ?と姫川に頭をかきむしられる神崎が布団で顔を隠す。 「じゃあこれ俺の部屋の鍵だから」 「ああ、こっちは俺らの」 「明日の荷物は持って来てっから朝飯の後鍵返せ」 「わかった。それじゃあな」 「神崎頼むな」 「言われなくても」 なんだかんだ、ロイヤルスイートに部屋が変わった事で機嫌が直ったらしい庄次はヒラヒラ手を振って部屋を出た。 いつの間にか俺の分の荷物も纏めておいてくれたかおるも俺の荷物を持って部屋を出る。 振り返ると、姫川があのベッドの布団をめくっていた。 あーあと姫川の呆れ声が聞こえたが、静かにドアを閉めた。    * 「東条さんっ!東条さんってば」 揺さぶられて起きてみれば、頬を赤く腫らした庄次がいた。 何事かと訊けば俺が寝ぼけて殴ったらしい。 「いい加減起きて下さいよ!」 「もう朝か……」 「朝飯はアウトっすわ」 「んー?」 「アラームかけたの元の部屋でだったんすよ」 「あー起きたか。虎、庄次」 きっちり支度を整えたかおるがベッドルームに現れる。 ロイヤルスイートは2つのベッドルームがあって、明らかにお楽しみ後だった方はかおるが使ってくれた。 だからよく眠れなかったのだろう。 「つーか起きてたんなら東条さん起こせって。  『俺が起こす』とか言ってたよな?」 「忘れた。それに俺あっちの部屋いたから」 「はぁ……自由だなぁこの幼馴染達」 「すまんすまん庄次。で、今何時だ?」 「8時45分っすよ。美ら海行くんすよね?  だとしたらまとめてバスで行くらしーんで、  あと15分で出ねーと」 「いーよ、めんどくせえ。眠い」 「いやアンタが言ったんじゃないすか!  男鹿と神崎が行くなら行くつって」 「ああ、そーか。アイツらいるならいーな」 「あーもー、はいはいはい!着替えて行きますよ!」 ほとんど成すがままで着替えさせられてロビーに降りる。 『朝食ビュッフェは終了しました』 飯屋のそんな立て札を横切ってロビーのバス待ちの人ごみの中で、奥まった柱に一人もたれ掛かって携帯をいじる姫川を見つけた。周りに神崎はいない。 「姫川ァ」 手を振ると姫川が顔を上げて、また視線を携帯に戻す。 かおると庄次も俺を見た。 「朝から姫川ともめるのは嫌だぞ虎」 「鍵、返すだけだろ」 「くれぐれも揉めねーで下さいよー。まだ朝なんすから」 「なんだよ二人そろって。信用ねーなー」 カードキーを差し出すと、姫川は別段いつも通りの無表情で受け取り俺らの鍵を返してきた。 「部屋の荷物は交換するようフロントに指示したから」 「おーさすが姫川。で、神崎は?」 「……明け方自分の部屋戻った」 「体力あるなアイツ」 「虎、神崎は "酔いつぶれた" んだぞ」 「あー、そう!二日酔いがなくて良かったな!」 無意味な誤魔化しを庄次が笑う。 まあ全部を知っている姫川の前では誤魔化しというか建前なんだが。鍵をポケットにしまいながら姫川が訊いて来た。 「何だよ、あの血」 「ん?」 「どーも酔いすぎた神崎クンが真ん中のベッドで  粗相したよーで?ご迷惑かけたみてーだけど。  枕にべっとりついた血はわかんねーんだよなぁ。  ご本人もしばらく鼻血流してたし」 あーこれちょっと怒ってるな。 かおるを見ると、やれやれと眉を上げた。 代わりに取り繕ってくれるようだ。 「南珍とヤりあった時にな──、」 「いや、それ俺が殴ったからだわ」 「あ?」 「待て、庄次」 姫川が庄次を睨む。 庄次は庄次であっけらかんとして笑った。 「大事にしてーなら首輪つけとけバーカ」 「殺すぞ」 「いや、マジでのこのこヤられにくる馬鹿なんだし。  首輪ぐれえ着けとけ。ほら噂をすれば」 いつもの取り巻きを引き連れて、チビッコを抱いた神崎が俺らに気づいて睨んでくる。 手を振ってやれば、フイと視線を逸らす神崎の代わりに夏目が手を振ってきた。 神崎はどうやら姫川を探しているようで、キョロキョロ視線が落ち着かない。 まさか俺らと一緒にいるとは思いもしないんだろうな。 そんな神崎に夏目が耳打ちすると、パッとこっちを見る。 それからチビを城山に託して、小走りで駆け寄って来た。 嬉しそうに振る尻尾が見える。うーん。可愛い。姫川が心底羨ましい。 「ほらな、のこのこ来たろ?」 「……神崎、お前……」 「姫川、おはよ」 「おいおい、俺らには挨拶なしかよ」 「うるせえ死ね。なぁなぁ姫川、昼一緒に食お」 「あららー彼女からのお誘いいいねぇ姫川クン」 「あ?うるせえな、つーかなんでコイツらといんの?」 「……昨日、お前が酔いつぶれて世話になったからな、  礼を言ってたんだよ」 「酔いつぶれた?何が?」 神崎が首をかしげた。 その場にいる全員が神崎にため息を漏らす。 哀れに思ったんだろう、昨日からどうも優しい庄次が神崎に耳打ちするとハッとした神崎が姫川に慌てて取り繕う。 「そのだな、えっと、酔った事すら覚えてなくてだな」 「いーよ、とにかく修学旅行ってろお前は」 「昼は?」 「お前のしたいように何でもしてやるから、もう戻れ」 姫川がため息と共に神崎の頭を撫でて、夏目の元にリリースする。何度か振り返って、夏目達と合流した神崎はチビに手を引かれるままエントランスを出て行った。 いつの間にかバスが停車している。そろそろ時間か。 「よしじゃあここは一旦手打ちだ!魚見に行くぞ魚」 「あのなあ東条。手打ちって言えるのは俺だけだぞ」 「あとで虎と庄次を置いて詫びはする。  だけどな、割と本気で首輪はいると思うぞ」 「それは俺も考え直した。怪我させんのはちげぇだろ。  ってことでお前らもう神崎にちょっかいだすなよ。  あれ、俺のモンだから」 「えー大事に使うからたまには貸してくれよ」 「気が向いたらな」 「まぁお前の気が向かなくても、  東条さんは勝手に持ってくるだろうけどな」 「お前らこそ、この猛獣首輪付けとけ。  俺を本気で怒らせるなよ」 ヒラヒラと手を振って姫川は一人エントランスを出た。 常日頃、神崎達と行動しないのを疑問に思ってたが、 アレだ。ようやく分かった。神崎が隠せないのだ。 昨日散々いじめられた俺達がいたのに、駆け寄って来たのは姫川がいたから。 姫川がいると、姫川しか見えないんだろう。 「どうした庄次?昨日からやけに神崎に熱くないか?」 「いやぁ嘘つくのは違わねーかと思って」 「まあ手荒にしなければ姫川も神崎の運用を再考するだろ」 「運用?あいつらガチで付き合ってんじゃ?」 「そこの所どうなんだ?虎」 「む?神崎はそのつもりだろーが、姫川はよく分からん」 「ええ……神崎は納得してるんすか?」 「そもそも神崎は、自分が姫川の承諾の上で  俺に差し出されてる事は知らないしな」 「は?ええ……?でもそれじゃ神崎が」 「あ、やべえバス出るってよ」 何やら不穏な庄次をバスへ押し込める。 腑に落ちていないだろう庄次は、 それでもとりあえずは気持ちを切り替えたようだった。 庄次は少し勘違いをしているようだが、 姫川が神崎を弄んでるとかそういう事じゃない。 姫川を観察してみれば、大体は神崎を目で追っている。 大事にしてるからこそやり過ぎたらちゃんと牽制してくる。痛めつけるのがNGなだけだ。 首輪は付けてるんだよな。リードが長すぎるだけで。 このリードを短くされても困る。 仕方ない、神崎をいじめるのはしばらく控えよう。 そう誓う俺の隣。 姫川以上に神崎を目で追っている庄次には、気かない振りをしておく事にする。 END


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